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映画「ミッドサマー」ネタバレあり感想解説と考察 なぜ花が、なぜ「9」が多用されるのか?「◯と△」で読み解く神話的暗喩とは?

 
こんにちは! 
 
Machinakaです!! 
 
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この記事では、「ミッドサマー」のネタバレあり感想解説記事を書いています。
 
 目次
 

まえがき

 

 

今回批評する映画はこちら

 

「ミッドサマー」

 
 

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(C)2019 A24 FILMS LLC. All Rights Reserved.
 
 
正直言って、今年一番観たくない映画の一つである。
 
 
ただ、勘違いしないでほしい。駄作の匂いがするとか、評判が悪いとか、そういう意味では全くない。むしろその逆で、映画の完成度には非常に期待をしている。
 
本気でトラウマを植え付けられそうで怖いのだ。
 

監督はアリ・アスター。前作「ヘレディタリー継承」では、個人的には「リング」以来のトラウマを植え付けられてしまった。

映画館で鳥肌全開になり、何か見えてはいけないものが見え、聞いてはいけないものが聞けたしまったような気さえした。

 

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もちろん、映画は好きだ。ホラー映画は好んで見る。

しかし、本気で怖いのは観たくない

 

ホラー映画に関しては、そんなあまのじゃくな気持ちがいつも私の心を蝕んでいく。。

 

鑑賞後、生きて帰ってこれるかまだ分からない。これ以降、トラウマでブログが書けなくなるかもしれない。

 

まだ、死にたくない。

 

 

 

・・・それでは「ミッドサマー」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。

 

 

 

 
 

あらすじ

  
・長編デビュー作「ヘレディタリー 継承」が高い評価を集めたアリ・アスター監督の第2作。不慮の事故により家族を失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人たち5人でスウェーデンを訪れた。彼らの目的は奥地の村で開催される「90年に一度の祝祭」への参加だった。太陽が沈むことがないその村は、美しい花々が咲き誇り、やさしい住人たちが陽気に歌い踊る、楽園としか形容できない幸福な場のように思えた。しかし、そんな幸せな雰囲気に満ちた村に不穏な空気が漂い始め、妄想やトラウマ、不安、そして恐怖により、ダニーの心は次第にかき乱されていく。ダニー役を「ファイティング・ファミリー」のフローレンス・ピューが演じるほか、「トランスフォーマー ロストエイジ」のジャック・レイナー、「パターソン」のウィリアム・ジャクソン・ハーパー、「レヴェナント 蘇えりし者」のウィル・ポールターらが顔をそろえる。

eiga.com

 

 

 
 
 
 

「ミッドサマー」のネタバレありの感想と解説(全体)

 
白昼の美しい風景とは対照的に行われる凄惨な儀式!
あなたはこの地獄絵図を正視できるか!? 
 
見た後は確実にグッタリKO間違いなしだが、辛さの中に旨みありよろしく、グロさの中にも旨みあり。 
 
前代未聞のホラーだと騒ぎ立てるのも良いが、これは単なるホラーではない!
 
むしろ、ホラーではない!
 
特定のジャンルに囚われず、監督が作りたいものを追求し、映画愛が爆発したアート作品として捉えることも可能な、多様な見方ができる素晴らしい作品!
 
この素晴らしい作品に祝福を!そして祝祭を!!
 
象徴的に使われた花、数字の「9」、「◯や△」を使った神話的暗喩など、考察しがいのあるネタがたくさん! 
 
もっと今作の多様性が広がるように徹底解説するぞ!! 
 

 
 
 

 

これはホラーか、芸術か?ジャンル映画の可能性を拡張した大傑作

 

まずは率直な感想を。

 

前作「ヘレディタリー継承」で現代ホラーの頂点とまで言わしめたアリ・アスター監督。

子供の頃、「リング」に怯えて未だにトラウマを持っている自分に、新たなトラウマを植え付けたのが今作。

 

「ヘレディタリー」では王道な悪魔払いホラーを撮っているように見えて、家族という逃れられない呪い、という世界中誰にも共通する恐怖を伝搬させた。

まだこちらの方が、分かりやすくホラー映画として見ることができただろう。印象的な音の使い方もあって、映画ファン界隈では大きく盛り上がった。

・・「コッ」

 

www.machinaka-movie-review.com

 

  

しかし今作はホラー映画を撮った監督とは思えないほど画面が明るく、美しい花が画面を彩り、まさしく「異彩」を放つ作品が、今作「ミッドサマー」である。

 

物語的には、調子に乗ったアメリカの大学生が旅行先で痛い目に逢う、一種のジャンル映画のようにも見える。

 

もっと限定的に言うと、今作はまるでイーライ・ロス監督が得意とするようなプロットの作品にも見える。監督自身が影響を受けたかどうかは分からないが、今作は非常に「イーライ・ロス」的な作品だと感じた。

 

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しかし今作はイーライ・ロスのようなジャンル映画的な方向には舵を取らず、「サスペリア(リメイク)」のような、分かりやすい答えを用意しないアート映画のようにも感じることができる。宗教的なメタファーも多く含まれている部分からも、ミッドサマーはサスペリア(リメイク)と近い部分が多いと思う。

 

www.machinaka-movie-review.com

 

 

まとめると、イーライ・ロス的なジャンル映画のプロットを踏襲しつつも、作品が伝えたいメッセージや結末は分かりやすく伝えておらず考察のしがいがある、ジャンル映画とアート映画のバランスが非常に見事な作品だったと率直に思う。

 

ただ、ジャンル映画といっても今作は実に異彩を放つ映像が用意されており、ホラー映画とは思えないほどの美しい絵作り、謎解きの要素、複合的な宗教暗喩が含まれており、新たなジャンル映画の拡張が今作で達成されている。

 

ただ怖いだけじゃない、分かりやすくいえば深〜い内容が、鑑賞後も観客を引き付けるのだろう。

 

 

 

 

グロさの中にも旨みあり 

 

ネタバレはできないが、美しい絵作りとは全く対照的な地獄絵図が待ち受けているのが今作の特徴だろう。

 

それだけでも十分、価値はある作品だ。ネタバレはできないが、普通はカットするような凄惨なシーンをじっくり見せてくれるのだから。テレビはもちろん、並の映画じゃ絶対に見られないグロが満載である。

 

絶句に次ぐ絶句が、この一本に包まれている。

 

しかし、今作は残虐描写を目的化しているわけではない。

 

今作の残虐描写は、ホルガの民に古くから伝わる儀式の恐ろしさと説得力を与えている。

また、キャラクターが見聞きしたものを直接画面に見せることで、キャラが感じる恐怖を追体験・共感できるのも魅力だ。

 

絶対にここから逃れられない恐怖を与えるためにも、見せしめのためにも残虐描写は必要だった。

 

 

なぜここまで激しい肉体損壊をあえて見せるのか、なぜこうも簡単に人間が破壊されるのか。一体、監督はどんな性格なのか・・? と怖がる人もいるかもしれないが、本人は優しく穏やかな人柄のようだ(インタビューの音声や動画を見聞きする限り)

 

豆情報だが、アリ・アスター監督は「心気症」を患っており、死の恐怖が常につきまとっていたという。逆に、人間が健康で問題なく生きていることが「奇跡」と捉えているそうだ。

キャラクターたちが無残に殺されて、肉体が壊れていくのは、監督にとってはごく当たり前な出来事として捉えている可能性がある。

それほど、人間が生きていること自体に不思議を感じている人なのだ。

 

そして、「アフター6ジャンクション」の監督インタビューにて、「肉体は、無条件でいつか僕たちを裏切る」と話しているところからも、死や肉体損壊については確固たる思想を持ち合わせている。

 

www.tbsradio.jp

 

 

残虐描写が作り手の実生活や思想に直結している作品も、なかなかないだろう。

本当に恐怖を感じているからこそ、あれだけ激しい肉体損壊が描写できるのだ。

 

ちなみに、ホルガに向かう途中、ウィル・ポールターは異様にダニを怖がったり、ライム病のくだりを話していたが、あれは監督自身の虫や病原菌に対する恐怖を反映したものらしい。

監督は撮影中、靴下を二重で履き、虫に刺されることを非常に警戒したという。。

 

 

 

 

 

 

 

考察:なぜ花が多用されたのか?

 

 

今作で使用されるガジェットとして、非常に印象的なのが色とりどりの「花」

 

美しい花がなぜ、ホラー映画とも取れる今作に多用されているのだろうか。

花はお祝いの時に使用され、今作の祝祭を表すにはピッタリなガジェットであるが、単に祝いを表すためだったのか?

それ以外にも、花を多用した理由はあると思う。

 

 

一つは、女性を強調するために使われていると感じる。

 

アリ・アスター監督は「ヘレディタリー」でも、女性の方が超能力を持ち、災いを受けるように設計されている。男性はただ、女性に降りかかる災難を傍観しているしかない。

また、花と女性は親和性があり、花を画面に含ませることで女性が中心の物語のように誘導することもできる。

 

 

二つ目は、ホルガに住む人間と花との関係性を見せるために、用いられたのだと感じる。

 

 

主人公たちが住んでいる街では巡り会えないような多種多様な花を見せることで、彼女らが日常的には出会えない、異世界的な世界観を花で構築している。

 

花をはじめとした自然は、ホルガに住む人間の代替物とも捉えることもできる。

 

この文脈を踏まえると、クイーンに選ばれたダニーは花で埋め尽くされ華やかに見えるが、彼女の顔は沈んでいる。

 

ダニーの体に花=ホルガの人間がまとわりつき、完全に拘束された状態であることを暗喩しているように見えて、仕方がないシーンでもある。彼女はホルガから絶対に逃れられないことを示している。

 

ダニーの足元が木の枝に変わっているように見えたシーンも、ダニーが徐々にホルガに侵食されていることを暗示しており、これがラストシーンへつながる伏線だったのだと気づく。

 

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©2019 A24 FILMS MIDSOMMAR

 

 

三つ目は、花が持つ様々な性格や特性を映画に活かすためだと考えられる。

 

直接的なセリフでは説明されないが、今作は多種多用な花の使い方が行われている。

 

分かりやすいのが「祝祭」を伝えるための花の活用。色とりどりの花で村を飾り、主人公たちを歓迎するという好意的な性格も持ち合わせいる。

 

また、ホルガに着くまでに一休憩する場面では、主人公たちが幻覚キノコを使ってトリップする。

主人公たちを文字通り異国に「トリップ」させる効果もあった。

 

そして、きわめつけは花を使って主人公たちに危害を加えるシーン。

 

ホルガの住民は、花によって幻覚効果を加えたり、精神異常をきたしたり、花を使って主人公たちを蝕んでいく。

ダニーの彼氏が喋れなくなるのも、視界がぼやけたり歪んだりするのも、全ては花の毒によって引き起こされている。

ただ、花の鱗粉は細かすぎて画面には見えず、まるでホルガの住民が魔法を使っているような印象を観客に与えられているのが、素晴らしい演出だと思う。

手をパン!と叩くだけでダニーの彼氏が意識朦朧とするのも、花の毒が起こしたものだろう。

 

普通のホラー映画なら銃や刃物が主人公たちに危害を加えるガジェットになる。

しかし、ホルガの住民は決して銃や刃物を人に向けない。

花を殺戮のガジェットとして使用したホラー映画は、そうそう観れるものではない。

 

 

 

考察:なぜ「9」ばかり出てくるのか?

 

今作で印象的に使われている数字の「9」

IMDbに「9」に関する考察が行われていたので、紹介すると・・

 

・ホルガの祝祭は「9」日間続く 

・「9」人の生贄が選ばれる

・ホルガのライフサイクルは18・36・54・そして72であるが、全て「9」の段のかけ算で構成される数字である。

・1の位と10の位を足すと、18:1+8=9、36:3+6=9、54:5+4=9、72:7+2=9となり、全て「9」となる

・祝祭は「90」年を1周期とし、これも9×10になる

・Midsommarを構成するアルファベットの数は「9」文字

・冒頭、留守番電話に表示される数字は「9」

 

元ネタ:IMDb

www.imdb.com

 

以上のように、これでもかというくらい今作には「9」が隠されている。

 

この9の多用には、スウェーデンに浸透している北欧神話が関係している。

 

北欧神話では「9」つの世界が存在し、オーディンは「9」日「9」夜、グーングニルに突き刺されていたという。北欧神話にとって「9」は重要で、ホルガの信仰は土着的に見えて、北欧神話がベースになっているのだ。

 

ホラー映画なら「6」、キリスト教なら「7」など、映画と数字の関係は切っても切れないが、これほどまでに「9」を徹底して強調する映画も珍しいように感じる。

 

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考察:印象的に使われる◯と△がもたらすもの

 

映画の中での「◯」と「△」の効果

 

今作では印象的な「◯」や「△」の図形が分かりやすく表示されている。

 

今作の考察に入る前に映画における「◯」と「△」の心理的効果を説明すると、「◯」は自然的・受動的、「△」は攻撃的な印象を与えるという。

 

自然界に直線的なデザインがなく、常に曲線を描いていることからも、「◯」が自然的であると感じられる証拠。

一方で「△」は不安定で先端が尖っており、攻撃的な印象を持つのも頷ける。

  

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「◯」は自然と輪廻転生を表す

 

これを踏まえて考察すると、ダニーの花冠に「◯」の穴があるのは、自然的・受動的である印象を強化するデザインになる。

 

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©2019 A24 FILMS MIDSOMMAR

 

また、花冠という円環構造自体が、ホルガの信仰の原理となっている「輪廻転生」を暗喩している。

 

生まれ変わりを信じるからこそ、ホルガの人たちは心おきなく高所から飛び降りられるし、命を投げ出すことを厭わない。

 

本来であれば輪廻転生は仏教の考え方でありスウェーデンでは根付かない宗教思想であるが、ホルガという仮想の世界観だからこそ、複合的な宗教的価値観が見られる。ここが映画の面白いところだ。

 

 

「△」は攻撃を表す

 

 また、△が持つ効果は「攻撃」であり、9人の生贄たちが火にかけられる建物が三角形の構造を持っているのも、幾何学的な説得力がある。

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©2019 A24 FILMS MIDSOMMAR

 

「◯」と「△」の組み合わせにより三位一体を表す

 

何より印象的なのが、ホルガの入り口にある「◯」と「△」が複合した工作物。

 

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©2019 A24 FILMS MIDSOMMAR

 

これは、キリスト教における三位一体の概念を象徴するものだと思う。

三位一体は、神様は「父なる神」、「子なるキリスト」、「精霊」の三つの形となって現れ、この3つが一体となって神となっている考え方である。

 

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wikipedia 三位一体



 

ホルガの住民、「精霊」という言葉を使っていることからも、ホルガの儀式は精霊を呼び出すものであり、そのために9人の生贄を捧げる仕組みになっているのではないかと感じる。

 

まとめると、ホルガが儀式で何をしたいのか、映画では詳しく説明されないが、紐解いてみると北欧神話やキリスト教など、実在する神話や宗教をベースにしていることがよく分かる。

 

それにしても、アメリカ人のアリ・アスター監督が輪廻転生という仏教的考えを取り入れたのが、とても意外性があって面白い。 

 

 

 

その他小ネタ

 

ホルガの住民が高いところから飛び降りるシーンや、主人公たちが他文化を受け入れられない様子は1947年の「黒水仙」を思い出す。

 

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また、スウェーデンが舞台となっているところや、同じくホルガに訪れていたカップルが「イングマール」と名付けられていたあたり、確実に名匠イングマール・ベルイマンの影響を受けている。

 

ベルイマン自伝

ベルイマン自伝

 

 

最近ベルイマンの「野いちご」を見たが、こちらもミッドサマーと同じく解釈が非常に難しい作品だった。。

 

 

 

2.24追記 ウィッカーマンとの比較によるラストの解釈

 

アリ・アスター監督自身が公言しているが、今作が1973年のイギリス映画「ウィッカーマン」を大いに参考にしている。

なお、ニコラス・ケイジ版を参考にしたかは、定かではない。

 

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今作と同じく、現世とは隔離された空間、土着信仰による生贄や白装束、女性の夜這いなど、現代文明から取り残された人間たちを狂気的に描いている。

 

 

 

ウィッカーマンのリメイクだとか、真似しすぎているとの声も挙がっているが、今作はウィッカーマンとは明らかに異なる部分がある。

 

ウィッカーマンはキリスト教=現代文明とドルイド教=キリスト教以前の民族宗教との対比が明確であり、ミッドサマーのホルガが提示しているような複合的な宗教ではない。

 

ドルイド教はキリスト教以前にケルト人の間で信仰されていた民族宗教であり、ハロウィンやクリスマスの木など、現代キリスト教文化の元となっている宗教である。

ドルイド教はキリスト教の進出によって信仰が阻まれ、時には異教徒として魔女裁判など火あぶりにかけられることもあった。

 

ウィッカーマンのラストでキリスト教信者の警官が木人の中で火あぶりにされるが、これはドルイド教の儀式でもあり、キリスト教が行ってきた異教徒に対する火あぶりのカウンターにもなっている。

 

ドルイド教がキリスト教に復讐するようにも見えるラストであり、ドルイド教とキリスト教の二項対立がウィッカーマンである。

 

一方ミッドサマーは、特定の宗教に固定せず、北欧神話やその他宗教を交えて、ホルガ独自の架空の信仰を作り上げている点で斬新なのだ。

 

ただし、ウィッカーマンと全く関係がないかといえば、そうではない。

 

ラストシーンに9人の生贄を火あぶりにするが、その中にダニーの彼氏が含まれている。

ダニーの彼氏の名前は「クリスチャン」。これはただの偶然じゃないだろう。

 

ダニーの彼氏を「クリスチャン」とすることで、ウィッカーマンにオマージュを捧げるだけでなく、今作はキリスト教という現代宗教・文明を真っ向から否定し、存在自体を消すことにも繋がっている。

 

そして、キリスト教を現在の時勢と捉えるならば、これを消去することでダニーが現在進行形で苦しんでいる両親・妹の死のトラウマを燃やし尽くしているようにも感じる。

 

さらに、輪廻転生など死に対して肯定的な考えを持つホルガの考えを受け入れることで、ダニーは救われ、ラストは微笑んでいる。

 

アメリカ国内ではキリスト教が主流であり、生きづらさを感じていたダニーにとっては、これほどの救済はなかったのだろう。

 

彼女を救済するためにも、彼氏の名前はクリスチャンでなければいけなかった。

 

一見するとウィッカーマンと共通する点も感じられるが、きちんと女性の救済というテーマに向けて映画が作られている。

 

ちなみに、アリ・アスター監督は今作の製作が決定する前に恋人と別れており、恋人に起きた出来事や自身との経験を交えているとインタビューで語っている。

 

 

 

 

2.26追記 なぜ真っ白な光、白装束が必要だったのか?

 

今作で印象的だった(なんか、各章でこんなくだりを言ってる気が..)のは、光の使い方。

 

光がまばゆく、ホラー映画には似つかない光。

 

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©2019 A24 FILMS MIDSOMMAR

 

なぜ、あんな光にする必要があったのか?

 

単にホラー映画の定説を覆したいからという、気のてらいが目当てではないはずだ。

 

個人的には、まばゆい光はロングショットの多用と密接に結びついていると感じる。

 

ロングショットとは広角レンズを使って広い風景を撮るようなカットで、今作ではホルガ村に着いた途端、ロングショットが多用される。

 

ロングショットとは通常、広い世界を撮るために使われる。街の風景だったり、自然だったり、そこがどんな環境かを表すために使われる。

ロングショットにも明確な被写体がいる。

 

しかし、今作はまばゆい光によって、コントラスト(光の明暗)が極端になくなってしまう。

 

雄大な自然が写っているのは分かる。しかし、まばゆい光でどこか異世界のような雰囲気がある。

そんな異世界の背景に、白装束の村人が踊っている。。

 

白い背景・白い人・・・画面は極めて白っぽくなる。

背景とキャラの輪郭が曖昧になる。

 

この絵作りこそが異世界感を醸し出し、まるで今何を見てるか分からない感覚を観客に与えている。

 

極めて白く、そして輪郭が曖昧だからこそ、おとぎ話のようで。でも実は凄惨なことが起こっていて。。

 

この絵と物語の対照的な関係こそが、今作の最大限の魅力と言っていい。

 

こちらはホラーではないが、今作と同様に絵と物語が対照的な関係になっている映画。 

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まとめ

 

ホラーというジャンル映画に囚われず、アート映画としても十分過ぎるほどの輝きを放った本作。

 

新たなホラー映画の形を提示したとともに、監督の作家性を存分に発揮できたのも素晴らしい。

 

普段見ているホラー映画では絶対に味わえない要素が、この映画にはある。

ただグロいから、怖いからでは済まされず、後を引くのが今作の最たる魅力だろう。

 

何より、ここまで考察しがいのある映画に出会えたのも久しい。

本当に、本当に本当に考察をしていて面白かった作品!!

 

92点 / 100点 

 
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 以上です! ご覧いただきありがとうございました!
 
 
 

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