こんにちは!
Machinakaです!!
この記事では、「窮鼠はチーズの夢を見る」のネタバレあり感想解説記事を書いています。
目次
まえがき
今回批評する映画はこちら
「窮鼠はチーズの夢を見る」
行定勲監督作品は、「ナラタージュ」を観た以来でしょうか。。今の邦画の中でも、とても美しい映像を撮ることで有名な人ですよね。岩井俊二に影響を受けたのも納得です。
が、今作を観ようと思った直接の原因は行定勲監督目当てではありません笑
今作の原作者である水城せとな先生が出演した「アフターシックスジャンクション」を聴いて、先生が好きになったからです笑
センセーショナルで人間の本性を暴くような作品を手掛けている作家でありながらも、トークは非常にきさくでフランクな話しぶりに、すっかりファンになってしまいました!!
www.tbsradio.jp
LGBTQに対しての意識が高まる世の中ですが、私からすると今作は同性愛の映画のようにも見えます。
まさか、おっさんずラブみたいな作品にはならないでしょうね・・・?
www.machinaka-movie-review.com
それとも、こっちの「夢を見る」ではないでしょうね・・・?
どんな作品になるか分かりませんが、大倉くんが大胆に脱ぐということだけは知っております笑
それでは「窮鼠はチーズの夢を見る」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。
あらすじ
・恋に溺れていく2人の男性を描いた水城せとなの人気漫画「窮鼠はチーズの夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」を、行定勲監督のメガホンにより実写映画化。主人公の大伴恭一役を「関ジャニ∞」の大倉忠義、恭一に思いを寄せる今ヶ瀬渉役を成田凌が演じる。優柔不断な性格から不倫を重ねてきた広告代理店勤務の大伴恭一の前に、卒業以来会う機会のなかった大学の後輩・今ヶ瀬渉が現れる。今ヶ瀬は妻から派遣された浮気調査員として、恭一の不倫を追っていた。不倫の事実を恭一に突きつけた今ヶ瀬は、その事実を隠す条件を提示する。それは「カラダと引き換えに」という耳を疑うものだった。恭一は当然のように拒絶するが、7年間一途に恭一を思い続けてきたという今ヶ瀬のペースに乗せられてしまう。そして、恭一は今ヶ瀬との2人の時間が次第に心地よくなっていく。
eiga.com
9月11日(金)公開/映画『窮鼠はチーズの夢を見る』90秒予告
「窮鼠はチーズの夢を見る」のネタバレありの感想と解説(短評)
間違いなく行定勲監督の最高傑作
これまで複数の行定勲監督を観てきて、正直言って苦手な監督だったんですよ。
「世界の中心で、愛をさけぶ」だったりね。とにかく感情たっぷりに「助けてくださぁぁぁいいいいい!!!」と叫ばせて、大声で言わなくても分かるような内容をあえて叫んでみたりね笑
とにかく、間接的表現が基本的文法である(べき)映画にとっては、行定勲監督の演出はどうも直接的すぎて、魅力がないと思っていたんです。
今作は原作の水城せとな先生の刺さるセリフや面白い設定に加えて、行定勲監督の確かな演出が極まった作品だと思います。
改めて言わせてください、今作は行定勲監督の最高傑作です。
監督、面白かったですよ、この映画!!!!
同性愛を含めた多様な恋愛、多様な考え方がぶつかり合い、人間の本性が垣間見える瞬間が多くあり、各キャラを一人ずつ見ていくと非常に毒々しく怖く見えるのですが、そういったクセのあるキャラクターの見事なアンサンブルによって、もはや人間讃歌にも思えるような内容に仕上がっておりました。
恋愛はあくまで人を描くためのツールとしての一面もあって、本質的にはキャラクターを深く掘り下げることによって、それぞれ考え方も行動もバラバラな人間たちがいがみ合いながらも、同じ場所・同じ時間を共有できることの奇跡を描いているように思えました。
セリフで伝えず映画的描写で伝える
決してセリフではなく映像や音響など、映画的描写で伝えているのが今作の最も大きな魅力だったと思います。
・タバコで全てを伝える
タバコがパンパンに詰まっている車内には成田くん。颯爽と道路を走る大倉くん。
冒頭から既に、彼と彼の物語だと言うことがたっぷり伝わってきます。
車にタバコがパンパンに詰まっているのは、それほどまでに大倉くんを待ち続けていたのでしょう。
今回はタバコが多く出てくるのですが、タバコの量で成田くんの心理描写を伝えたり、大倉くんが辞めていたタバコを吸い出す→成田くん側に気持ちが動いているなど、タバコによる人物描写が見事でしたね。
・カールスバーグのビール
大倉くん、大倉くんの同級生である智佳子、成田くんの3人で修羅場化している居酒屋の場面にて。
智佳子か成田くんか、どちらをお持ち帰りするのか選べと言われる大倉くん。
明言できず、とりあえず飲み物を注文するのですが、成田くんが飲んでいるカールスバーグのビールを注文してしまうんですよね。
これ、大倉くん的にはなんとなく注文したと思うんですけど、自分で選べないことを智佳子に怒られてしまうんです。
ただ、このシーンが非常に深くて、、成田くんと智佳子的には「カールスバーグ=成田を選んだ」と思ってしまうんですよね。
限りなく相手を傷つけたくない大倉くんは、セリフ的に「◯◯を選ぶ」とは絶対に言えない、言い出せない。だからこそビールで相手の気持ちを伝えるように「暗喩」させる演出が、本当にお見事でしたね! これ、漫画版でも同じシーンあるのかしら・・・
・フランス映画の字幕がセリフ代わりに
成田くんと大倉くんの気持ちが高ぶり、本格的に事に及ぼうとした時に
「オルフェ」という映画が流れるテレビ画面が写り、この映画の中で「これからすることは、理解しないでいい」という字幕が流れるんですよね。。
これ、大倉くんと成田くんの気持ちを代弁している字幕ですよね! まさか字幕で感情を伝えるとは、、セリフといえばセリフですが、別の映画のセリフで主人公の気持ちを伝えるなんて、、、お見事です!!!
・ラストのシーンは黒沢清っぽい
ラストのシーン、大倉くんと成田くんがドライブで曇った空の中で海に出かけるシーンがありますけど。
あの雲のどんより具合、これから二人にとって悪いことが起きる雰囲気満々じゃないですか、、セリフでは最後まで言わないけど、ドライブ中にどんよりとした空気が満載なんですよね。
このシーン、というか空の表現は、まるで黒沢清の「回路」のような印象がありました。
回路
- 発売日: 2013/11/26
- メディア: Prime Video
また、日の出が見える時に二人で語り合っているラストは韓国映画版の「渇き」のラストのように思えました。
・反復するシーンで感情を伝える
印象に残ったのは、事に及んだ後に大倉くんの相手が必ず椅子にちょこんと座ること。
最初は成田くん、次はタマキちゃん。全く同じ姿勢、同じ服装(上は寝巻き、下はパンツ)なんですよね。
成田くんが座っていたことを覚えていた 大倉くんは、タマキちゃんが椅子に座っていたことで成田くんがフラッシュバックしてしまうんですよね。
うまい、このシーンはうまい!
ちなみに、今作で成田くんは非常に女性的なんですけども、座り方とカメラワークによって、成田くんのトランクスの面積が狭くなり、まるで女性下着を付けているように見せていた所も本当に見事ですよね!!! これ気づいた人は少ないかもしれませんが・・
セリフが刺さります。とにかく刺さります。
成田くんと大倉くんが寿司屋でご飯を食べているとき、ふと「なぜ付き合うのか」について成田くんが大倉くんに問いかけるんです。
で、大倉くんは「大切にしたいから」と返すんですが、成田くんは「大切にしたい、、なぜ?」と質問返しするんですよね。
・・・なぜこんなに刺さるセリフをあっさりと言えてしまうのだ成田よ!!!!
最初からそんなセリフ言ったら違和感ないかね!? 成田くんってどんなキャラなのよwww 最初は単なる先輩・後輩の関係のように見えて、急速に彼氏・彼女のような関係になってるじゃんかよ!!!!!
この思い切ったセリフを冒頭に出すことで、最短距離で成田くんと大倉くんの関係を浮き彫りにしてるんですよね。。
恋愛、待ったなし!!!!
商業映画でよくぞここまでの濡れ場を
浮気写真をもみ消したい大倉くんは成田くんに交渉を仕掛けるのですが、寿司屋に行って終わりかと思いきや・・・・
キャアアアアアア!!!!
ビビりましたよ、、、ネタバレ出来ませんが、こちらが予想してた以上に早く、二人は「関係」を持ってしまいます・・・
もう一度言わせてください。
キャアアアアアア!!!!
そして、すかさず大倉くんの浮気相手との濡れ場を映す・・・ネタバレは出来ませんが、こちらが予想している以上に遥かに過激な描写が、映画冒頭に流れてしまいます。
今一度思い返してみると、待ちに待った成田くん的には当然の行動だったのかもしれません。
しかし、ここで大倉くんに大きなツッコミをせざるを得ません。。大倉よ!!!なぜノーと言わない!? イエスマンすぎるだろ!!!!!
ここでジム・キャリーの「イエスマン」を思い出しました。
まだ映画始まって15分くらいですよ? それなのに衝撃的な濡れ場を2回も・・・
ちなみに、私が観た劇場は男性5%、女性95%という男女比でして、右を見ても女性、左を見ても女性、、
気まずいよww
しかも、今作の濡れ場で衝撃的だったのは露出の高さ。
ハッキリ言っちゃいますけど、ハダカ丸見えです。出るところも出ます。しかも、出るのは男性だけではありません。女性もちゃんと出ます。
ジャニーズ大倉くんと成田くんが出ていて、全国公開のメジャー映画なのに、見ているこっちが気まずくなるような露出の多い濡れ場の数々ですよ・・・
中学生が見たら大変だぞっ、この映画!!!!
ここで注目すべきは、全国で流れる大メジャーな商業映画にも関わらず、大胆な濡れ場を見せてくれたこと。
行定勲監督はジャニーズを主役にした作品を複数作っておりまして、「ナラタージュ」や「ピンクとグレー」でも、濡れ場を見せてくれてはいました。。
が、いずれの作品も濡れ場は中途半端で、正直「え・・・及び腰?」と思うような内容ばかりだったのです。
今思えば、ここまでの大作で超有名人を使って演技させるのですから、自主規制するのも納得ちゃあ納得。だが、行定勲監督は今作で一皮むけましたね。
いわゆる日本の商業映画の典型的なフォーマットにも関わらず、ここまで大胆な見せ場を作ってくれたのですから、、
いろいろ規制が多い世の中ですが、テレビじゃ絶対に観れない派手な濡れ場を映画で見せてくれたことに大変感謝しております。
よくやった、行定勲!!!よく脱がせた!!!!
大倉くんが今回まぁ最高で。
成田くんや様々な女性との濡れ場を見事に演じたのもすごいんですけど、私が注目したのは後輩社員タマキさんに対する接し方。
企画書を添削してほしいとお願いに来たタマキちゃんに対して、妙に優しくおっとりした口調で話す大倉くんww
そして強引にカフェに連れ込んで業務中にデートっ!!企画書をパラパラめくって「いいんじゃなぁーい? いいよぉ、いいよぉ」と非常にデレデレした口調でタマキに接してるんですよね。
この口調、このデレデレ感。。
オッサンだよwww
絶対企画書に目を通してないだろお前!!!!とツッコみたくなるような、仕事のことはどうでも良くて女の子目当てなあの口調・・・
大倉くんがやるから、あんな口調でも妙にカッコいい感じがするんですよね笑
大倉くんの演技で際立ったのは、オッサン感が満載なデレデレ演技だと個人的に思いました笑 こんなところに注目してる人、少ないかもしれませんが・・笑
今作で目立ったのは、主要人物のほぼ全てが「既に付き合っている人がいるにも関わらず、浮気・不倫しようとしている」点。
成田くんしかり、大倉くんしかり、大倉くんの嫁しかり、とにもかくにも恋愛の乱れ打ちで、一本の映画でこんなにも多くの浮気・不倫者を見かけるのも珍しいです。
芸能ニュースだと浮気や不倫は袋叩きに合いますが、今作では浮気・不倫しすぎてむしろデフォルトに見えるのが不思議なところです笑
このまとめ方に異議を唱える人もいるかも知れませんが、同性愛やゲイバーの描写も含めて、非常に多面的で多様性のある恋愛の豊かさを、今作で伝えたかったのではないでしょうか?
私も鑑賞する前は大倉くんと成田くんの性愛描写に目がいってしまい、同性愛を謳った映画なのかなと思ってましたが、鑑賞後は違う印象を持ちました。
映画のロケ地が俺に寄り添いすぎ問題
この映画に出てくる街の数々は、本当に私に縁があるところばかりで驚きました。
映画のロケ地が、俺に寄り添ってくれたんですよ。成田凌くんばりにずっと寄り添ってくれたのです。。
大倉くんが働いている場所は品川駅からほど近い、「品川シーズンテラス」というビルなんですよね。あの印象的な階段、エスカレーターにピン!ときました。
あまりプライベートなことは言いませんが、、、私ここで健康診断を受けたことがありますww 大倉くんも会社員で、妙なシンパシーを感じたんだよなぁ。。
また、大倉くんが成田くんとデートしているときに、タマキちゃんと合うシーンでは日比谷と有楽町の中間地点の大通りだったんですけど・・・
俺がこの映画を観た映画館、TOHO日比谷だったんですよwww まじかよ!!都内で撮影しているのはわかっていたんですが、まさか日比谷が映るとは・・
そして、大倉くんと成田くんが釣りデートしている場所は、都内では有名な釣り堀スポット、「市ヶ谷フィッシングセンター」だったんですよね。
私、ここの近くの大学でずっと釣り堀を横目に通学してたんですよww
もうねぇ、刺さりまくりですww
都内に在住の方はわかるかもしれませんが、地方の方は中々気づきにくいと思いますので、是非東京に来た際はロケ地情報をご利用くださいね。東京でもGoToが使えるようになりますんでね・・
まとめ
やられました。
行定勲監督作品で、こうも面白い作品に出会えるとは、、、
もう一度言いますが、監督、本当に面白い作品をありがとうございましたっ!!!
95点 / 100点
以上です! ご覧いただきありがとうございました!