- まえがき
- あらすじ
- 「ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒」のネタバレありの感想と解説(短評)
- ストップモーションの概念が覆される
- 現代技術と古典技術の見事なリンク!
- 究極のミスマッチ、ズレ漫才が冴え渡る
- まとめ
まえがき
今回批評する映画はこちら
「ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒」
はい、ストップモーションアニメで新進気鋭のスタジオライカの新作と聞いて、いてもたってもいられなくなりました。
スタジオライカとして、そしてストップモーション・アニメーションとして初となるゴールデングローブ賞のアニメーション賞を受賞し、ディズニーやソニー・ピクチャーズなどの名だたる会社を抑えての受賞。
これは、映画館で自分の目で確かめないといけません。
スタジオライカといえば、「クボ」で日本人よりも日本のことをよく熟知した日本描写で驚かされたのが、未だに記憶に新しいです。
ストップモーションの技術はもちろん、ストーリーテリングや設定の緻密さ、裏付け、アニメーション映画にとどまらないのが魅力。
映画ではありませんが、「ゴーストオブツシマ」も海外のメーカーなのに日本の侍を丁寧に描き、PS4最後の傑作として名作認定された作品。
グラフィックやシステムの完成度だけでなく、緻密なリサーチこそが名作を生むのです。
今作ではどんな動物と出会えるのか!?
それでは「ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。
あらすじ
・「KUBO クボ 二本の弦の秘密」や「コララインとボタンの魔女」などで知られるアメーションスタジオのライカが手がけたストップモーションアニメ。「神話と怪獣研究の第一人者」を自称するライオネル卿は、伝説の生き物を発見して自らの才能を世に示そうと旅に出る。その途上で、人類の遠い祖先である生きた化石=ミッシング・リンクと遭遇したライオネル卿は、種族で唯一の生き残りだというミッシング・リンクの親族を探すため、伝説のシャングリラを目指すことになるが……。ライオネル卿の声をヒュー・ジャックマンが担当したほか、ザック・ガリフィアナキス、ゾーイ・サルダナ、エマ・トンプソンらが声優を務めた。監督はライカの「パラノーマン ブライス・ホローの謎」を手がけたクリス・バトラー。第77回ゴールデングローブ賞で最優秀長編アニメーション映画賞を受賞。第92回アカデミー賞の長編アニメーション部門にノミネート。
「ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒」のネタバレありの感想と解説(短評)
「#ミッシング・リンク 」鑑賞!
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2020年11月13日
CGだと見間違うほどの驚異的なストップモーションに言葉を失い、脱帽
ミッシングリンク=失われた輪を探し求めて、世界を駆け巡る英国紳士のその様はまるで「80日間世界一周」のよう。古典にも思えるその行為は、実は超現代的。今こそ分断でなく「輪」を探すべきだ! pic.twitter.com/mZlfzK47ZL
ストップモーションの概念が覆される
いやぁ、たまげました。
映画冒頭から最後まで、圧倒的な映像美にただただ打ちのめされました。
と同時に、大きな喜びを受け取ることが出来ました。
なんだ、なんなんだこれは。
これは褒め言葉7日どうか分かりませんが、、
CGのように見えて仕方ない。
今作はスタジオライカによるストップモーションアニメです。VFXは使われていますが、キャラクターは基本的に人形模型。
ワンフレームごとに位置を微調整→撮影を繰り返すという鬼畜のような作業を繰り返して完成するのが今作のようなストップモーション・アニメーションなんですよね。
普通のストップモーションなら、すぐにキャラのカタカタした動きでストップモーションが判明してしまうのですが、今回はそれが全くと言っていいほどないんです。
歩いたり走ったりするシーンを長回しで見せない限り、CGのように滑らかな映像が流れ続ける。ストップモーションであるにも関わらず、映像が連続的なんです。
こんなことがあっていいのか。観る前に「これストップモーションだよ」と言われなければ、最後まで「あぁ〜、良いCGだったなぁ」と気づかない人もいると思います。
鑑賞を終えた今でも、信じられません。普通ストップモーションであるなら、それらしい動きをあえて出してケレン味を与えたり、「一つ一つ動かしてるんですよ」ということを伝えようとする。
それがストップモーションのアニメーションだと思っていましたが、今作でストップモーションの概念が覆されたと言っても過言ではありません。
ゴールデングローブ賞受賞、アカデミー賞ノミネートも納得のクオリティ。むしろ、アカデミー賞でなぜこの作品を選ばなかったのかと疑問に思うくらいです。
現代技術と古典技術の見事なリンク!
特筆すベきは、静的・動的の両方の描写において、ストップモーションかCGかどうか分からないほどの表現をしている点。
動的な部分については、派手なアクションシーンで銃や斧を振り回したり、肉弾戦が繰り広げられるシーンも存分に映し出し、非常に滑らかに動きます。誰が見ても凄いと思えるアニメーションなんですけど、今作は動的よりも静的な部分でスタジオライカの技法が目立ちました。(静的・動的どちらも素晴らしいのですけどね)
静的な部分については、キャラが喋っているときの口の動きに驚かされます。これまでCGとの比較をしてきましたが、CGを超えて実写レベルです、今作は。
ストップモーションを作るに当たり、3Dプリンターによってキャラの顔を何千通りも作り、一つ一つのセリフに合った口の動きをした模型をワンフレームごとに入れ替えてるんですよ。
・・・信じられます?この労力。この手法。
ストップモーションでありながらも、最初はCGによってキャラの表情をデジタル化し、3Dプリンターによって模型にする(アナログ化)。
あらゆる現代の映像作品において、普通は現実にあるものをCGによってデジタル化する、アナログ→デジタルの流れが主流にも関わらず、今作ではデジタル→アナログという逆行的な制作手法がとられているんですよね。
せっかくCGを作ったのなら、その背景とキャラCGでアニメーションを付けて映画化すればいい。それが普通。
が、スタジオライカはあえてアナログに戻してストップモーションというアナログの極みのような手法で作っているんです。
アニメでは日本を代表として手描きによる手法(アナログ)と、ディズニーのようにフルCG(デジタル)による手法が代表的で、その他ストップモーションなど珍しい方法がありますが、今作はどのジャンルにも該当しない、スタジオライカだからこそ出来る手法で作ったことを、評価すべきではないでしょうか。
ストップモーションだからといって、全てアナログで作る必要はない。
・デジタル:水の表現などは得意なCGで一括処理
・アナログ:キャラの服飾は模型によって、解像度に縛られない美麗な材質表現を実現
などなど、アナログとデジタルで得意な分野は違います。
デジタルとアナログを融合によって最高のアニメーションを行う方法論として、スタジオライカではストップモーションが採用されているのかもしれません。必ずしも、ストップモーションありきではないような気がします。
映像に重きをおいて映画を観る私にとって、そして少なからずCGを生業としている私にとっては、大変刺激的な作品であるのは言うまでもありません。
仕事のモチベーションが上がったような、そんな気がします笑。
究極のミスマッチ、ズレ漫才が冴え渡る
まとめ
なんか、いつものテンションとは違って冷静な視点で書いたような気がします。
振り返ってみると、感想文の中で、私のトレードマークである「!」がほとんど使われなかったような、、
本当に刺激を受けた作品だと、こんなにもおとなしくなってしまうのでしょうか。
デジタルとアナログの見事なリンク、これぞ新しいアニメーション表現だと思える素晴らしい作品でした。
ぜひ、ぜひとも皆さんにご覧頂きたいのですが、今は鬼滅がスクリーンを多く使用している状態。
今作を公開初日に観に行ったのですが、シネコンにしてはかなり小規模なスクリーンだったんですよね。
鬼滅が悪いなんて言いませんよ?
ただですね、鬼滅だけがすべてじゃないんです。
ミッシングリンクも!!!
オススメです!!!!
90点 / 100点