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映画「マイ・エレメント」ネタバレあり感想解説と評価 心頭滅却すれば火もまた涼し

 
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この記事では、「マイ・エレメント」のネタバレあり感想解説記事を書いています。
 
 目次
 

まえがき

 

 

今回批評する映画はこちら

 

「マイ・エレメント」

(C)2023 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
時は来た!!!!
 
ハリーポッターのスピンオフながらも、原作者による脚本とエディ・レッドメインによる主演で、非常にクオリティの高い映画だった「ファンタスティックビーストと魔法使いの旅」の続編がついに公開です!!!

 

 

 

それでは「マイ・エレメント」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。

 

 

 

 
 

あらすじ

  
「トイ・ストーリー」「モンスターズ・インク」「リメンバー・ミー」など数々の独創的な作品を世に送り出してきたピクサー・アニメーション・スタジオが、火、水、土、風といったエレメント(元素)の世界を舞台に描く長編作品。

火、水、土、風のエレメントたちが暮らすエレメント・シティ。家族のために火の街から出ることなく父の店を継ぐ夢に向かって頑張っていた火の女の子エンバーは、ある日偶然、自分とは正反対で自由な心を持つ水の青年ウェイドと出会う。ウェイドと過ごすなかで初めて世界の広さに触れたエンバーは、自分の新たな可能性、本当にやりたいことについて考え始める。火の世界の外に憧れを抱きはじめたエンバーだったが、エレメント・シティには「違うエレメントとは関わらない」というルールがあった。

監督は「アーロと少年」のピーター・ソーン。声の出演はエンバー役に「ハーフ・オブ・イット 面白いのはこれから」のリア・ルイス、ウェイド役に「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」などに出演したマムドゥ・アチー。日本語吹き替え版ではエンバー役を川口春奈、ウェイド役を「Kis-My-Ft2」の玉森裕太が務める。短編「カールじいさんのデート」が同時上映。

マイ・エレメント : 作品情報 - 映画.com

 
 

「マイ・エレメント」のネタバレありの感想と解説(全体)

 

 

 

ピクサー版「ズートピア」

ボロ泣きです。。。

 

ピクサーによる「インサイド・ヘッド」「ソウルフル・ワールド」に続く抽象的概念の擬人化シリーズ。

 

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「インサイド・ヘッド」では感情、「ソウルフル・ワールド」では魂、そして今作では「元素」。

 

感情や元素と違って、火・土・水・風という完全に人ではない概念を擬人化して、見事に人よりエモーショナルなキャラクター造形を作り上げていました。。

 

火と水のラブストーリーなんて作れるかって話ですよw

トイストーリーやニモは人形や魚だからやりやすいかもしれないけども、流石に火や水ってどういうことだよw

 

また、全く相容れない存在が共存するという点で、既にディズニー本体の方で「ズートピア」という大傑作がありますけども、ピクサー版の「ズートピア」を見事に作り上げたというか、色んな意味でズートピアを越える作品になるかもしれない、とさえ思えました。

今作のエンバー(火)とウェイド(水)はズートピアのジュディ(草食動物)とニック(肉食動物)の組み合わせと同じくらい相容れない火と水のコンビですが、蓋を開けてみれば抜群の相性でございました。。

 

エンバーはエレメントシティに移民としてやってきた家族の子供で移民2世なのですが、父親が作った小売店を手伝いつつ家業が継げるかどうか悩んでいる。

ひょんなことでウェイドと出会ってしまい、火と水の禁断の恋が始まってしまう。。

 

エンバーとウェイドが出会う前に、エンバーの両親がエレメントシティに入国して店を立ち上げるまでのシーンが数分間だけ描かれるんですが、短い時間でいかに火と水が相容れない存在かというのを端的に描いてくれるんですよね。

 

ピーター・ソーン監督といえば「カールじいさんの空飛ぶ家」の冒頭の台詞なしの回想シーンがあまりにも有名ですよね!

カールじいさんが若い時から結婚して歳を取り、奥さんが亡くなって一人になってしまうという、非常に短い時間ながらおじいさんの一生をたっぷり描く。

「こんなん反則だろ!!」と思ってしまうシーンですよねw

 

それを今作でもやってるんですよ。物理的に火と水は相容れないってのは分かってるんですけど、あくまで「人間的な」意味合いで対立を描くんですよね。

エンバーの父親の店に水元素たちが入ると、嫌がらせに「おっとこぼしちゃった」と火の商品に水をかけで台無しにしてしまう。移民の店に「水を差す」キャラクターとして水元素が描かれるんですよね。

ここでエレメントシティが今のアメリカあるいは他民族社会を写したものであるっていうことが暗喩的に示されるわけです。

 

物理的不相性に加えて、移民と先住人との対立によって火と水がいかに相性が悪いかを二重の説得力を持って説明してくれるわけです。火が水を浴びると顔の一部が無くなってしまう、一方で水が火を浴びると蒸発して消えそうになる。絶対に触れてはいけない2元素たち。

さすがピーター・ソーンです。

 

見事なまでにピクサー版のズートピアになっているし、あまりにも概念的な要素(元素)が元になっているため、想像の余地が多いはず。加えてどの元素を移民とするかなど、非常に難しい選択を迫られたと思いますが、見事に他民族元素社会が描かれておりました・・・!!

 

 

心頭滅却すれば火もまた涼し

メインはエンバーとウェイドの恋愛なわけですが、もうエモすぎてエモすぎて困っちゃうくらいエモいんですよねw

だって(物理的に)手も繋げないんですからww

 

幼い頃から水元素=相容れない存在として父から教えられ、かつ身を持って体験してきた水元素に対する恐怖。単に人種の違いのメタファーでは説明できない絶対的相性の悪さから、エンバーはウェイドを拒絶してばかり。

 

しかし、ウェイドの底抜けに明るい性格とユーモアで次第に二人の距離は近づいていく。初めてデートするシーンは最高でしたねw

特にプリクラ?を撮るシーンで、エンバーの光で目しか映らない写真が出てきた時は腹を抱えて笑いましたww

完全に失敗した写真だけど、エンバーはレジのある机に差し込んで眺めている。。

なんちゅう初恋物語やw エモいw もっとやってくれww

 

水を嫌うエンバー一家とは異なり、ウェイドの家族はエンバーに対して非常に肯定的。ウェイド側も水との対立を描くかと思いきや、全くそうじゃないんですよね。

ウェイド側は白人富裕層? そんな単純な人種への投影ではないと思いますが、非常に涙脆いキャラクター造形(水だから?w)はツボでしたねw

 

ラストは水の特性を巧みに使った衝撃的な出来事が起こり、涙腺完全崩壊。。

ずるいですよね、ピーター・ソーン監督w

あんなの誰でも泣くしかないじゃんww

すっかりウェイドのように泣いてしまった私ですが、そこでちゃんとサプライズを用意してくれたのも素晴らしいです。

確かに、よくよく考えれば水蒸気になっていたのは物理的に合点がいくんですよねw

砂漠とかに行かない限りウェイドは不死身なんでしょうw

 

 

エンバーの怒りをコントロールできない問題の背景とは

しかし、今作は恋愛が成就したらゴールではなくて。

実は一番重きを置いているのは、エンバーが大人として成長し、親から独立する話なんですよね。

 

エンバーは子供の頃から怒りをコントロールできない問題を抱えているんですよ。

火が紫色になり、怒りを爆発させると文字通り周囲も吹き飛ばしてしまう。

ここからは非常にセンシティブな部分に触れますが、この症状は「火病」について描いていると思うんですよね。

 

ピーター・ソーン監督は韓国にルーツを持ち、彼の前作「カールじいさんに空飛ぶ家」でも監督の子供時代を写したようなアジア人が登場します。

エンバーの両親が小売店を立ち上げる描写からも、韓国系移民のメタファーであることが伺えます(韓国系移民はアメリカに来てドラッグストアなど小売店を営むことが多かった)。

 

そして子供のエンバーが怒りをコントロールできない描写が何回も描かれるのは、実際の韓国で問題になっている火病をなぞらえたものではないかと思うわけです。

そして、エンバーはウェイドと愛を結び互いの体を触れ合わせることにより、怒りが抑えられるようになる。

 

「心頭滅却すれば火もまた涼し」ということわざがあります。

どのような困難も苦難もそれを超越した境地に入れば苦しさも感じなくなる、という意味です。

 

今までエンバーは少しでもストレスが溜まると、耐えきれずにすぐにブチギレてしまったわけですが、エンバーによって苦難や困難を超越した境地に入れたわけですよ。

単にウェイドとエンバーが結ばれた話ではなく、エンバーの成長物語に涙した作品でしたね。

ピーター・ソーン監督がこのことわざを知っていたかどうかは分かりませんがw

 

 

親の店を継がなかった人間として身が詰まる思い

これは完全に個人的な話ですが、今作の設定は非常に身が詰まる思いでした。

 

私の家族は某地方で飲食店を営んでおりまして、私が社会人2年目の時に定年退職をして店を畳んだんですよね。

当時はまだまだ東京の会社でバリバリ働きたい意欲があって、何も悩むことなく「俺は店を継がない」と電話でキッパリ断ってしまいました。

しかし、何年も働くにつれて「地元に帰らなくて良かったのか」「店を継いでいたら人生どうなっていたのか」と夜な夜な考えることが増えてきました。

 

今作でエンバーが初めて店を一人で任されるシーンや、本当に自分が店を継いでよいのかという悩みは、私の悩みそのもので本当に刺さりました。

また、エンバーと同じく私も一人っ子なんですよ。兄ちゃんや姉ちゃんが何とかしてくれる。弟や妹は自由に働いてもらって自分は店を継ぐ、といった選択が全くできなくて、全て自分で考えるしかないんですよね。

そりゃエンバーが悩みを抱えるはずですよ。それに恋人がいて、その家族からインターンがあるけど来ない?って誘われて、家業を継ぐか別の場所に行くか選択を迫られるわけですよ。

 

もう悩みの連続ですよ。

実家を継ぐ・継がない問題というのは、一人っ子の身としては選択が非常に難しい、不完全燃焼な問題なんですよ。。

エンバーは俺だよ。。

 

20代の頃は視野が狭かったというか、一直線だったんですよね。東京と地元、どちらも活かす方法なんて考えられなかったし。仕事には場所性が伴うというのは常識だったわけです。

しかし、2020年にコロナ禍が訪れて、仕事に場所性が伴わなくなってきました。

とある事情で出社から完全在宅に切り替えた私は、東京から横浜へ引っ越し、何一つ不満のない生活を送らせてもらっています。

しかし、不満はなくても人生の選択肢=可能性の火はまだ消えてないんですよね。

親孝行のために実家の方に移って仕事しても良いじゃないか。あるいは家業を継いでも良いんじゃないか。一生会社員で生活していて良いのか、と。

色んな思いが頭の中に張り巡らされて燃えたぎってしまうのです。

 

エンバーの決断は、私と同じものでした。地元ではなく、自分のやりたい道を進み別の都市に移動しました。

しかし彼女もまだ若い。彼女も私と同様に、実家を継ぐか否かの問いかけを続ける時が来るのでしょう。。

 

諸事情あって、現状はすぐに継げるものではないです。しかし、どこかのタイミングで選択が迫られる時が必ず来るでしょう。

何年後か分かりません。何ヶ月後かもしれませんが。今は来るべき選択と決断に備えて、自分のキャリアや将来に向けた資産形成などを猛勉強している最中です。

みんなどうやって備えてるんだろうw すごく気になりますw

 

30半ばになり、結婚問題も実家問題も様々なものが顕在化してきて、悩みの火種が絶えません。

東京・横浜にこだわる理由は、ハッキリ言って映画なんですよw

都心の利便性に慣れきっているのもありますが、一番は映画館が近いということ。

将来どうしよー、どうしよーと悩みながらも、すぐに映画館に行って現実逃避をしてしまいます。

すぐに非現実に逃げ込める場所が近くにある、というのが地元に帰りたくない原因かもしれませんね。

 

今作を見て、こんな思いを持つ人がどれだけいるか分かりませんが、同じ状況に置かれた人がいたらコメントくださいw

 

 

 

まとめ

あとは今作の字幕が本当に素晴らしかったですね。

「水を差すな!」とか「アンビリーバブル(ウェイド=水が発言w)」とか、「くすぶってんじゃねぇ!」など、火や水に関する面白パワーワード連発で爆笑させてもらいましたw

 

エンドロール最後まで見なくて確認できなかったのですが、字幕翻訳のご担当者の方は誰だったのでしょうか。。。

今この記事を読んでいて分かる方はぜひコメントよろしくお願いいたします!!

 

 

 

99点 / 100点 

 

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 以上です! ご覧いただきありがとうございました!
 
 
 
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