- まえがき
- あらすじ
- 「2分の1の魔法」のネタバレありの感想と解説(短評)
- 「2分の1の魔法」のネタバレありの感想と解説(短評)
- ピクサーが本気で作った「なろう系」ロードムービー
- 差別・偏見の一切ない、誰も傷つかない優しい世界
- なぜ主人公は高速道路に合流できなかったのか?
- 「2分の1」に込められたメタファーとは?
- 鑑賞中に思い出した映画
- まとめ
まえがき
今回批評する映画はこちら
「2分の1の魔法」
はい、映画館で予告編を何度見たことでしょうか。コロナの影響をモロに受けてるのは仕方ありませんが、公開が遅れすぎてピクサーの「ソウルフル・ワールド」の予告も流れ出すという事態になってましたね。
何回も何回も予告を見て、おそらく上映時間以上は予告を見ています笑。
まぁ、それだけディズニー・ピクサー側も映画館側も期待してる作品なんでしょう。だってディズニー・ピクサーが公開しなかったらどれだけの損害になるか・・
いつものように満席では見れない。まさしく「2分の1の座席」状態での鑑賞になってしまいますが、出来る限り席が埋まって、魔法のような興行収入になれば良いですね!!
それでは「2分の1の魔法」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。
あらすじ
・「リメンバー・ミー」「トイ・ストーリー4」のピクサー・アニメーションによる長編作品。亡くなった父親にもう一度会いたいと願う兄弟が、魔法によって半分だけ復活した父親を完全によみがえらせるため奮闘する姿を描いた。かつては魔法に満ちていたが、科学技術の進歩にともない魔法が忘れ去られてしまった世界。家族思いで優しいが、なにをやってもうまくいかない少年イアンには、隠れた魔法の才能があった。そんなイアンの願いは、自分が生まれる前に亡くなってしまった父親に一目会うこと。16歳の誕生日に、亡き父が母に託した魔法の杖とともに、「父を24時間だけよみがえらせる魔法」を書かれた手紙を手にしたイアンは、早速その魔法を試すが失敗。父を半分だけの姿で復活させてしまう。イアンは好奇心旺盛な兄バーリーとともに、父を完全によみがえらせる魔法を探す旅に出るが……。監督は「モンスターズ・ユニバーシティ」を手がけたダン・スキャンロン。
「2分の1の魔法」のネタバレありの感想と解説(短評)
#2分の1の魔法 鑑賞
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2020年8月21日
ディズニー・ピクサーが本気で作った「なろう」系小説的ロードムービー!!
「半分」を強調する場面が随所に散りばめられ、2人で1つのことを乗り越える展開の連続で物語を構築出来たのはお見事!
単に「半分」じゃない、「片割れ」なんだ「相棒」なんだ。HARF OF IT!! pic.twitter.com/OO3vzavfXd
「2分の1の魔法」のネタバレありの感想と解説(短評)
#2分の1の魔法 鑑賞
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2020年8月21日
ディズニー・ピクサーが本気で作った「なろう」系小説的ロードムービー!!
「半分」を強調する場面が随所に散りばめられ、2人で1つのことを乗り越える展開の連続で物語を構築出来たのはお見事!
単に「半分」じゃない、「片割れ」なんだ「相棒」なんだ。HARF OF IT!! pic.twitter.com/OO3vzavfXd
ピクサーが本気で作った「なろう系」ロードムービー
はい、これまで「カーズ」など直接的な車・レース描写や、「トイ・ストーリー」にもロードムービー的な要素はあったと思いますが、今回が初じゃないですかね、ピクサーが本格的なロードムービーを作るのは。
どこか足りない二人が主人公で、自分自身を表すようなオンボロのバンにのってアメリカらしい直線一本道を走る。
ピクサーが本気でロードムービーを作ってきたなぁというのが第一印象でした。
基本的にはピクサー作品はベタ褒めなワタシですが・・・今回も最高でした!!!本当に、文句のつけようがありません。欠点がないのが欠点といったところでしょうか。
どこか足りない兄弟が旅をしながら成長していく。しかし、旅の目的がお父さんの上半分を探すというヘンテコな理由でどこかおかしく、子供が取っつきやすい理由を作っているのも実に素晴らしい。
現実世界ではない異世界を舞台に、ロード・オブ・ザ・リングやハリーポッターに出てきそうな魔法を存分に使いながら、最後はインディージョーンズ的な遺跡アクションもあって、観客を最後まで飽きさせない作りもお見事。
そして、最後の最後はロードムービーらしく出発地点に戻り、自分に何が足りなかったのかを再確認し、前を向いて歩いていく作りになっている。。
実に王道のロードムービーでした。何度も言いますが、こんなロードムービーなら子供であろうが誰が見ても理解できるし楽しめる作りになっているんです。
上手い、上手すぎるよピクサー、、。
あと、今回の特徴は今日本のアニメで流行している「なろう系」アニメの印象を受けたこと。
今作の世界自体、異世界とも言えるのですが、現代的な生活をしており魔法など無用の長物といえる世界。そんな世界の中で、兄のバーリーが魔法の世界を取り戻そうと孤軍奮闘し、魔法を使える才能があった弟とともに異世界を冒険していく話になってるんですよね。
最初は魔法もろくに使えないので、まさに「なろう系」アニメの系譜を継いでるのかなぁと。あと、お母さんが「私は勇者!!」とドラゴンに切りかかっていくシーンもありますしね笑
また、さすがピクサーとも言うべきなんですが、説明セリフなく映像一発で今作の世界を物語っておりました。
「かつて魔法の国があったというテロップ」から始まる本作ではありますが、冒頭にユニコーンがゴミ箱を漁っているシーンでやられました。
既に魔法の世界が廃れていることを、ファンタジー世界の代表格であるユニコーンにゴミ漁りさせることで「今の世界は魔法なんて使ってない、既に魔法は廃れている」ことを一枚の絵で表現するのはお見事です!
あと、お母さんとマンチコアのコンビが良かったですよね!というか、今回のCGモデリング、妙齢の女性描写が見事でしたね!! あの腹のたるみ、腕や足の太さ、絶妙な顔の輪郭とサイズ・・・。おかしいなぁ、アニメなのに実写を見ているような気がしたんですよね・・・w
今作はエルフやドラゴン、ケンタウロスなど空想世界の生物が元になっています。それが人間のように歩き、食べ、生活しているだけでも十分クオリティが高いのに。。
人間の身体的特徴もキャラデザに取り入れるとは、、何という絶妙なモデリングでしょう!!
差別・偏見の一切ない、誰も傷つかない優しい世界
今作の世界観を見て真っ先に感じたのは、エルフやケンタウロスという「異種が同じ世界で暮らしている」ことから、「ズートピア」のように異人種・異国籍の人々が暮らしているアメリカのメタファーなんじゃないかという疑問。
主人公のエルフはもちろん、マンチコアやドラゴン、馬人間がいる!って思ったらケンタウロス!なんだ、この多様性に溢れた世界は!!というのが正直な感想、ピクサー版「ズートピア」かなと思ったのです。
しかし、ズートピアと今作の違う点は、多用な生物たちを「現実世界の人々のメタファーにしていない」点。
ズートピアは草食動物や肉食動物という大別を行い、黒人白人を彷彿とさせるような描写がありました。思いっきり人種問題を想起させるような、そんな作りなんですよね。
人種問題については、気にする人は気にしてしまう映画でもあります。
しかし、今作はズートピアより遥かに生物が分類され、しかも架空の生き物ということで、、現実の人間の誰にも該当しないんですよ。
これ、誰も傷つけない素晴らしい手法なんですよ!!
あとは、コメディ描写にも誰も傷つけない素晴らしい配慮がなされていて。
今回のお笑いMVPは間違いなく小さい暴走族だと思うんですけども、体格が小さいから物理的に声が高いことを笑いにしているので、別に声が高い人を馬鹿にしているわけではないんです。
「オイ!フザケンナヨオマエ!!」って高い声で言われてもねぇww そしてバイクが使えなくなった時には羽を使って飛ぶんですけど、羽から出る鱗粉が本当にファンシーなんですよ!!
単なるギャグシーンとも言えるし、やってることはアホかwと言いたくなるんですが、、これ万国共通で笑えるネタなんですよね。それにこの笑い、誰も傷つかないんですよね!
なぜ主人公は高速道路に合流できなかったのか?
なぜ、主人公のイアンが運転できない描写が続くのでしょうか?特に、高速道路の合流車線から一般車線に乗れないのはなぜでしょうか?
自分の道を自分で決めれない(進めない)、社会の流れに合わせられないというメタファーですよね、これ。高速道路でブンブン走っている車たちは、過去を振り返らずにグングン前に進んでいく人々のメタファー。
一方のイアンはお父さんのことをずっと気にかけて、いくつになっても子供の時のトラウマを忘れられない。周りが前に進む一方で、自分はまだ心の成長が止まったまま→成長が遅い→高速道路に乗れない、という心理描写をセリフで直接説明することなく、見事に描写したシーンではないでしょうか?
「2分の1」に込められたメタファーとは?
目をみはるのは、「2分の1」を強調する描写が多かったにも関わらず、クドさが出ずに違和感なく最後まで鑑賞できたところ。
まず分かりやすいのはお父さんの体が腰から下の「2分の1」しか再生できなかったところ。残りの半分を再生するために旅に出るという、ロードムービーにおけるマクガフィンになっているんですよね。
次に、兄と弟の二人で一つという意味での「2分の1」。今作の兄弟は、本当に足りないんです。完璧じゃないんです。ハイパー中二病な兄のイタさが目立ってしまいますが、実は弟のイアンもかなりこじらせていることは間違いない。パーティーに誘う時のキョドりよう、高速に乗ることにビビる様子、社会に出ることが本当に不安でしょうがない様子。
この二人を観ると、二人で足りないところを補いあい、一緒に生きていかなければならないと自然と思ってしまいますよね。二人のこじらせ方が少々わかり易すぎる気もしますが、まぁ子供も観る映画ですからね。仕方がない。
あとはスンゴイ地味なんですけど、色んな道が「2分の1」だったことに気づいたでしょうか?
崖を魔法で渡るところも、「2分の1」までは兄がロープを持っていて、残りの「2分の1」は弟が自力で歩いていますよね。あとは途中で道が断絶されているのも、正確には図ってませんが「2分の1」くらいの距離でプッツン切れていたと思います。
これだけ「2分の1」を強調するあたり、何かメッセージを伝えたいに違いありません。
個人的には、今作における「2分の1」は「Harf Of it」=「片割れ」に置き換えられているような気がしました。
「片割れ」は、単に半分やかけらという意味ではなく、「一つのものもから分かれたもの」=「もともとは一つだったもの」という意味合いが強くなります。
また、アメリカでは「片割れ」は「ベター・ハーフ」=「魂の片割れ」と言う呼び方もされており、恋人や配偶者といった運命の人を指す言葉のようです。
つまり、今作は父親の「2分の1」を見つける旅に見せかけて、本質は「魂の片割れ」を見つけるロードムービーだったのではないでしょうか?
予告編では、単にお父さんの半分を見つける旅だと思わせておいて、本編を観ると「片割れ」を彷彿とさせる描写に感じられるんですよね。
しかも、主人公イアンと兄バーリーにとっての「片割れ」が何かを知った時、、涙が止まりませんよね〜〜!!!!
鑑賞中に思い出した映画
・「ズートピア」
様々な形態をした非人間のキャラクターが同じ世界で暮らしているところを見て、思い出しました。
www.machinaka-movie-review.com
・「harf of it」
「2分の1」=「片割れ」だと気づいた時に、「ハーフオブイットだこれ!!」と思いました。
『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから』予告編 - Netflix
・「ファンボーイズ」
フォースという魔法のような異世界技術を本気で信じる兄と、オンボロのバンでロードムービーする様子がファンボイーズっぽいなあと。
・「宇宙人ポール」
見た人がギョッとするようなキャラと一緒にロード・ムービーする様子を見て。
・「サバイバルファミリー」
まとめ
さすがディズニー・ピクサーです。本当に文句のつけようがない。
子供が見て楽しめるのはもちろん、子供を連れてみる親もかつての自分を見ているようで懐かしむこと間違いなしの、全年代全性別が見て楽しめる作品と鳴っておりました。
私も昔は魔法が使えると思ってましたよ。ぶっちゃけますけど、中3までメラが使えると本気で思って練習してましたよw
あと、余談ですが小学生の頃は「二重の極み」が出来ると思って、ひたすら石ころを二連打してました。。
結果、一つも割れなかったですけど笑
まぁ、まだ私には「片割れ」が作れないってことで、締めたいと思います、はい。
お後がよろしいようで!!!!
92点 / 100点