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菅総理ドキュメンタリー映画「パンケーキを毒見する」ネタバレなし感想解説と評価 食べたら最後。全てを飲み込むしかない。

 
こんにちは! 
 
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この記事では、「パンケーキを毒見する」のネタバレなし感想解説記事を書いています。
 
 目次
 

まえがき

 

 

今回批評する映画はこちら

 

「パンケーキを毒見する」

 
 

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(C)2021「パンケーキを毒見する」製作委員会
 
 
公開前から、これほど話題になっている作品もないのではないか?
 
本作の公式Twitterアカウントがお披露目試写会直後に凍結。
 
凍結した理由は不明で、Twitter社からはテンプレート回答のみ。
 
ちなみに、「新聞記者」のお披露目試写回直後も、公式アカウントが凍結されたらしい。一体誰が何のために、なぜこのタイミングで凍結されたのか。
 
このニュースを見てすぐに件の「新聞記者」に出てきた、SNSで政府を異常に養護する作業をする役人たちの顔を思い出した。

 

 

 

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現役総理を扱っていることもあり、かつ内容が菅総理を全肯定する作品ではないため、反乱分子の一種として政府が危険を感じたのだろうか。

 

しかし、仮にアカウント凍結が本作を妨害しようと画策したのであれば、それは大誤算だった。

 

この凍結のニュースはSNSで話題になり、マスコミも取り上げ、最大の宣伝効果をもたらしてしまったのだから。

 

私のような弱小ブロガーの記事は見向きもしないと思うが、何か異変が起きたらすぐに報告したい。

何もないことを、願うばかりなのだが・・・

 

内容に入る前に、現役総理を扱ったドキュメンタリーを制作した監督はじめスタッフの方々、配給会社、上映を決断した映画館、その他本作に関わる全ての方々に賛辞を贈りたい。本当にお疲れさまでした。そして、ありがとうございました。

 

それでは「パンケーキを毒見する」ネタバレなし感想解説と評価、始めます。

 

 ※今回は試写会にて鑑賞のため、ネタバレ「なし」の感想となります。

 

 
 

あらすじ

  
・「新聞記者」「i 新聞記者ドキュメント」などの社会派作品を送り出してきた映画プロデューサーの河村光庸が企画・製作・エグゼクティブプロデューサーを務め、第99代内閣総理大臣・菅義偉の素顔に迫った政治ドキュメンタリー。ブラックユーモアを交えながらシニカルな視点で日本政治の現在を捉えた。秋田県のイチゴ農家出身で、上京してダンボール工場で働いたのちに国会議員の秘書となり、横浜市議会議員を経て衆議院議員となった菅氏。世襲議員ではない叩き上げの首相として誕生した菅政権は、携帯料金の値下げ要請など一般受けする政策を行う一方で、学術会議の任命拒否や中小企業改革を断行した。映画では、石破茂氏、江田憲司氏らの政治家や元官僚、ジャーナリストや各界の専門家に話を聞き、菅義偉という人物について、そして菅政権が何を目指し、日本がどこへ向かうのかを語る。さらに菅首相のこれまでの国会答弁を徹底的に検証し、ポーカーフェイスの裏に隠された本心を探る。

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「パンケーキを毒見する」のネタバレなしの感想と解説(全体)

 

 

現役総理を扱った「主役不在のドキュメンタリー」

 

配給がスターサンズということで、これまでも「新聞記者」および「i-新聞記者ドキュメント」など、現実の社会問題を扱った作品を公開してきた。

 

その中でも、本作は菅総理の顔めがけてド直球でボールを投げつけるような、非常に意欲的な作品だった。

 

「i-新聞記者ドキュメント」でも、官房長官時代の菅総理がかなり長い間、スクリーンに登場した。

しかし、こちらの主役はあくまで東京・中日新聞の望月衣塑子であり、菅総理は単なるヴィランの一人に過ぎなかった。

 

本作でもヴィランとして捉えている点には変わりないのだが、これほどまでに菅総理の内面に迫った作品もなく、間違いなく彼が主役である。

 

しかし、当の主役は取材に一切応じることもなく、側近の関係者もだんまりを決め込む。

 

通常、ドキュメンタリー映画は特定のひとりの人物にフォーカスを当て、本人に実際に密着取材をするケースが多い。

フォーカスする人物が故人である場合は、その関係者からの証言を集めて映画が作られるのだが、今作はまるで菅総理がこの世から消えてしまったかのようだった。

 

過去の報道映像や写真でしか菅総理を見ることが出来ず、今作独自の取材によって撮れた生の菅総理は一秒たりとも映らない。

 

まさに「主役不在のドキュメンタリー」といったところだろうか。

 

なぜ取材に応じないのか。その理由が明かされた時に真っ先に感じたのが、「菅総理はブレない」ということ。ちなみに、「ブレない」という表現は決して肯定的な意味合いで使用していない。

 

自らが不利益を被るような機会は絶対に避ける。理由を聞いても何も答えない。答えたとしても、その内容はいつも明後日の方に向かっている。

 

非常にモヤモヤが残る、あの感じ。いつもの国会答弁の様子と酷似している。

 

ドキュメンタリー映画であれば、主役である菅総理を直接取材したいところ。

しかし、総理が取材を拒否したことによって、逆に普段の菅総理のブレない佇まいが良く表現されていたと感じた。

 

これでニコニコと取材に応じていたら、むしろ恐ろしい。自分に不利益な取材や答弁は一切控えようとする姿勢が、よく現れていた。

 

ちなみに、現役総理を扱った主役不在のドキュメンタリーを語る際には、マイケル・ムーアの「華氏119」について言及しなければならないだろう。

 

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ドナルド・トランプ前大統領が就任中に公開した作品であり、今作と同じく大統領からの協力を一切得られないまま、テレビ番組や報道映像を用いて彼の実体に迫っていく。

 

トランプは菅総理とは対象的に「出たがり」な性格であり、ありとあらゆる映像ストックの中から選りすぐりのトランプを見せていく。

マイケル・ムーアの作家性もあり、仰々しい演出とエンタメに富んだドキュメンタリーであった。

特に、冒頭の大統領選の様子を描いたシーンは何度見ても爆笑する(ヒラリー・クリントンには申し訳ないが)。

 

これに対して、今作は非常に日本人的というか、強烈なタイトルとは対象的に実直な印象を受ける。もちろん、アニメーションによるブラックコメディ要素も多く挿入されており、確かにユーモアはある。

しかし、マイケル・ムーアのそれとは明らかに異なる作風であることは間違いない。

 

興味があれば、今作の鑑賞後に比較して見てみることをオススメする。

 

 

報道映像や資料・新聞から客観的に総理を浮き彫りにする

 

本人から協力を得られない以上、いかに総理の内面に迫っていったのか。

 

本作はブラック・コメディ要素もあり、菅総理に対しては基本的に懐疑的・否定的なスタンスを取っている映画のように見受けられたが、肝心の菅総理の実態に迫る手法は実に中立的・客観的であった。

 

菅総理の生い立ちを子供時代から丁寧に調査し、大学時代の部活動から国会議員に至るまでをわかりやすく説明していく。

 

そして、菅総理を扱った書籍から、彼がどのようなスタンスで政治に臨み、何を目指す政治家なのかを浮き彫りにしていく。

 

ちなみに、本作で紹介される書籍のタイトルは、「喧嘩の流儀 菅義偉、知られざる履歴書」である。

 

 

一見関係がないように見える彼の様々な経歴が、今の菅総理の全てに結びつく瞬間は鳥肌が立った。どんな人も、過去にした行いが今に至っていることは往々にしてあるのだが、前述した通り菅総理は子供時代から「ブレない」人である。

 

どのような発見があったかは本作を見てもらうとして、丁寧な調査によって菅総理の実体が透けて見えてくるのは面白い。

 

何より、このような調査は我々一般市民にも行えることであり、逆に今までなぜこのようなドキュメンタリーが登場しなかったのか、少し疑問に感じる。

 

いかに菅総理を扱った映像がタブーなのか、改めて分かった瞬間でもある。

 

タブーといえば、報道ステーションで「アイアムノットアベ」という張り紙を出して話題になった古賀茂明氏が登場し、当時の状況を詳細に語る。

 

その時は菅総理ではなく安倍総理だが、自民党の体制は今も昔も変わらない。

 

政府がテレビ局に送りつけた実際の抗議文などを取り上げて、いかに自民党がテレビ局に関与したのかを客観的に描いていく。

 

古賀氏は明らかに現与党に対して否定的な人物。彼の主張には確実に与党への「毒」が含まれる。言い方が悪いが、偏重しているともいえる。しかし、そんな彼の主張を裏付けるかのように実際の抗議文がさりげなく挿入されている点に、本作の客観性がよく表れている。

 

フード理論から読み解くパンケーキを食べる意味

 

最後に、タイトルにある「パンケーキ」について、映画的な考察を行いたい。

 

菅総理は多く報道されているように、パンケーキ好きを公言。

記者たちと定期的にパンケーキによる懇親会を行っている。

 

前述したとおり、総理が実際にパンケーキを食べるシーンは一切映らないのだが、そこは他の報道映像で確認してほしい。

 

さて、なぜ彼がパンケーキを食べるのか、なぜ記者たちと一緒に食べるのか。

 

そこで用いたい理論が、「フード理論」だ。福田里香先生は映画や小説などに登場する食べ物に着目し、キャラクターがどのように食べ物を扱うかで、そのキャラの性格や特徴が決まるといった理論だ。

 

 

 

例えば、「イングロリアス・バスターズ」では悪人がケーキにタバコを押し付けるシーンが登場する。対して善人は美味しそうにケーキを食べる。

 

 

 この理論を当てはめれば、菅総理がパンケーキを振る舞い記者たちに食べさせるという行為は、記者たちにとっては相手に差し出されたものを食する行為に他ならない。

 

つまり、差し出されたものを食べる=飲み込むという図式が完成する。

何か言いたくても、パンケーキを食べている間は何も喋れない。

相手のなすまま、されるまま。何があっても飲み込むだけ。

 

まとめると、パンケーキを記者たちに食べさせる行為は、自分に従えというメッセージが含まれている気がしてならないのだ。

 

私が「ゼイリブ」の見過ぎなのかもしれないが、単にパンケーキを食べて懇親会を開くだけには思えないのだ。

 

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まとめ

 

現役総理を扱った稀有なドキュメンタリー。

 

今の与党体制では絶対に制作できないし公開されないと思っていたが、まさか実現するとは。

 

重ねて、関係者に感謝を申し上げる。

 

映画ファンとしては、根拠なき映画館の休業要請など、現政権には度重なる映画生活の制限を受けてきた。

 

これほど政治が映画界に影響を及ぼした年もない。

 

政治に興味のない方も、映画好きなら是非とも鑑賞いただきたい。

 

さぁ一緒に、パンケーキを毒見しようではないか。

 

 

85点 / 100点 

 
関連画像

 

 
 
 以上です! ご覧いただきありがとうございました!
 
 
 
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