はじめに
今回公開する映画はこちら!
「そらのレストラン」
それでは「そらのレストラン」、感想・解説、ネタバレありでいってみよー!!!!
あらすじ
・「しあわせのパン」「ぶどうのなみだ」に続く、大泉洋主演の北海道を舞台に描いたヒューマンドラマシリーズ第3弾。北海道せたな町の海が見える牧場で、牛を飼いながらチーズ工房を営む亘理は、妻のこと絵、娘の潮莉の家族3人、そして気の合う仲間たちと助け合いながら、幸せに暮らしていた。さらに東京からやって来た牧羊を営む神戸も加わって、それぞれが生産する食材を持ち寄っては、食材のおいしさを楽しんでいた。そんな彼らの食材を目当てに、ある日札幌から有名レストランのシェフがやって来る。彼の調理により、食材がさらにおいしくなることに感動した亘理は、この味をもっと多くの人たちに知ってほしいと、仲間とともに1日だけのレストランをオープンさせることを思いつく。大泉が主人公・亘理役を演じるほか、本上まなみ、岡田将生、マキタスポーツ、小日向文世らが脇を固める。監督は「神様のカルテ」シリーズの深川栄洋。
大泉洋さんにハズレなしという持論
少し前ですが、「アイアムアヒーロー」は日本ゾンビ映画史を塗り替えましたし。カメ止めとは正反対に、恐ろしい堂々たるゾンビ映画であったのですよ。
www.machinaka-movie-review.com
「恋は雨上がりのように」では予想をはるかに裏切って大傑作!
おじさんの大泉洋とJKの小松奈々の禁断の恋愛、、、とはならずにお互いを尊重し、認め合うというラストに大感動したのです!
大泉さんのうだつの上がらないファミレス店長は、とてもリアルでユーモアもあって、大好きなキャラクターでしたっ!!
そして一風変わった、演劇のような作品「焼肉ドラゴン」
普段のヒョロヒョロとした大泉さんとは打って変わって、井上真央さんと怒号を飛ばして痴話喧嘩するシーンが最高でございました!!!
そして近作では「こんな夜更けにバナナかよ」
実在した筋ジストロフィー患者を演じ、傲慢ながらも人情味のあるキャラクターは、本当にリアルな障害者像だと思います。
障害者って映画だと聖人君主のように描かれるんですが、それってリアルじゃない。
大泉洋さんのナチュラルにムカつく演技が、かえってキャラの魅力を引き立てることに成功していたと思います。
映画の感想
心がうっとり、体はしっとり
自然すぎる映画
はい、もう映画にすっかり浄化されて二度と下ネタ言えない体になってしまいそうです。
今の私のブログ「エロ」というキーワードで検索する人ばっかなんだけどな、もう二度とエッチいブログなんて書けないかもなぁ、、。
気を取り直して!
今作は北海道せたな町という、あまり知名度のない(すいませんね)町で繰り広げられるヒューマンドラマで、非常にナチュラルな映画の作り方をされていました。
ほとんど照明を使わず、自然光に頼った撮影
川のせせらぎや鳥の鳴き声が聞こえる原野
俳優たちのナチュラルすぎる演技
映像・音・そして演技が自然で、今作の舞台であるせたな町のイメージにぴったりな作り方でございました。
主人公たちはみな農家で、牛乳・チーズなどの加工品、野菜、肉、そして魚と、あらゆる食材を作っている人たち。
都会の喧騒も競争もない、東京のリーマンが一度は憧れる自然風景に包まれておりました。
自然な作り方のため、特に大きなイベントが起きる映画ではございません。
ただ淡々と生活をしている農家たちの話なのですが、その自然さゆえにほっこりしたり、笑ったり。自然体でいることがこんなにも素晴らしいとは。
俳優さんたちは基本的にアドリブ(だと思います)で、大泉洋さん、マキタスポーツさんなどのベテラン俳優によるワイワイ・ガヤガヤがたまんないんですよ、もう。
ただ野原で机出してビール飲んでるだけですよ!?
話してる内容もすごく普通だしギャグも面白くないし、どこの農家でもやってるような会話ですよ!?
大泉洋さんがいつもの調子で「おいおいおい〜、そんなことしていいのかい〜?本当にいいのかい〜?」とおどけてみたり、マキタスポーツさんはずっとグチグチ言ってたり、、
でも、それがいいんです。
自然な会話、自然の食べ物。
それだけでいい。。
自然と人工のはざま
と、思っていたのですが、映画は中編になってまさかの大転換を迎えます。
とあるイベントが起きてから、これまで自然な演技体であったのに、いきなり芝居くさくなる。
牛乳から加工されたチーズみたいに、演技に色と硬さが増して、ガッチガチの演技になっている。
自然体の演技とガチガチの舞台演劇のような芝居を混ぜてるんですよね。
最初はびっくりしたんですが、これはこれは新鮮な体験ができたと思っています。
何より、この自然な演技と人工的な芝居は、食べ物を作り加工し人の口へ入る過程のメタファーのようにも見えました。
もちろん生の食材で食べても十分に美味しい。でも、食材を加工し、シェフによって料理されると、もっと美味しい。
いろんな人が関わって、混ざり合った食べ物の方がすごく美味しいんです。
「いただきます」 命をつなぐ 愛言葉
今作のテーマは、「いただきますの意味」だと思いました。
農家を扱う作品だとかならずと言っていいほどあげられるテーマですが、ほとんどの作品では「いただく=命をいただく」という重要性を説いているものだったりします。
しかし今作は、別の観点から「いただきます」の意味を説いていたように思えます。
それは、「いただきます」は命をつなぐ合言葉であること。いえ、合言葉であると感じました。
ネタバレありというタイトルをつけたため、もう言ってしまいますが、チーズ農家の小日向文世さんが中盤で亡くなってしまうんですよね。
小日向さんは大泉洋さんの師匠で、師匠を亡くした大泉さんはあまりのショックでチーズ作りはおろか農家をやめようと決断してしまうんです。
しかし、それを阻止するべくマキタスポーツさんや岡田将生さんなど、苦楽を共にした仲間が大泉さんに小日向さんが作ったチーズを食べさせようと画策する。
チーズを食べた大泉さんはそこで気付くんです。
小日向さんがなんであんなに自分に厳しくあたっていたかを。なぜ喧嘩別れしたのかを。
チーズを通して、大泉さんと小日向さんが繋がったのです。
小日向さんは亡くなってしまいましたが、チーズとなって生きている。チーズに命がこもった瞬間であり、命が繋がれたのです。
そして、ラストのミルフィーユ。
主人公たちが丹精込めて作った野菜や肉が乗った美味しそうなミルフィーユに、最後にアクセントとしてかけられたのは、小日向さんの最後のパルメザンチーズ。
主人公たちを、小日向さんが包み込んでくれているのです。
まさかチーズに泣かされるとは思いませんでした。
せたな町へ行きたい!と思わせる観光映画でもある
せたな町が気になって調べてみましたが、函館の近くで、海に面している町。
海と山の両方を持つ、美しい原風景が広がる素敵な場所だと思いました。
行きたい、せたな町へ行きたい。。
そこでチーズを食べたい。そう思わせてくれる映画でございました。
都会のリーマンにとっては、憧れでしかな素晴らしい風景が広がっている町でした。