Machinakaの日記

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映画館はクラブじゃない! 〜都市計画的欠点が招く地方映画館の凋落とシネコンの独走

 
こんにちは! 
 
Machinakaです!! 
 
Twitterもやってます!
 
 
 

今回は真面目です

 
 
今回はいつものおふざけ駄文映画暴論ではなく、真面目に映画を語りたいと思います。
 
いつも過剰な「!」マークをつけて、文字数稼ぎしている私を見ている人からしたら、驚くかもしれません。
 
実は私、映画にハマる前はガッツリ学術研究の道に進んでおりまして。研究テーマは「中心市街地活性化、大店舗の郊外立地問題、」などなど、ざっくり言えば都市計画の分野です。
普段のブログでは絶対に出てこない単語と文章をフル活用して研究してました。
 
実は過去に、研究に関する記事も書いたりなんかしてます。

 

www.machinaka-movie-review.com

 

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さて、今回は「映画館はクラブじゃない! 〜都市計画的欠点が招く地方映画館の凋落とシネコンの独走」と題して、私なりの考察をさせていただきます。

 
タイトルだけでは意味が分からないと思いますが、実は都市計画を知っている人にとっては当たり前の話で。あまり書く意味がないと思ってたんです。
ただ、映画ブロガーの方とお話ししたら、書いた方がいい!と推して頂きまして、今筆を進めているところです。
 
往々にして、特定の業界では常識なことが、他業界では新たな発見につながるもの。
都市計画の業界では当たり前なことが、映画業界にとっては驚きの事実となるかもしれません。
 
映画ファンの方がどれくらいご存知か分かりませんが、映画と都市計画の意外な関係について、語らせていただきます。
 
これであなたも、町の小さな映画館がなぜ潰れてしまったのか、そしてなぜシネコンの独り勝ちになったのか、都市計画的に理解できるはずです。
 
 
 
 
 
 
 目次
 

なぜ近くの映画館が消え、シネコンばかり増えるのか

 
 
 
今、あなたが映画館に行くなら、どういった映画館を選択するでしょうか?
 
おそらく、大型ショッピングセンターの中にあって、上の階には駐車場があって、10スクリーン以上ある巨大な映画館かと思われます。そうです、いわゆるシネコンです。
 
一方で、シネコンに対して「町の映画館」や「地方映画館」などと言われる小さい映画館ももちろん存在していて。単にミニシアターというよりは、家の近くにある小さな映画館の事です。私が子供の頃は、街に2−3の映画館があって、そんなに大きくないにせよ近くで見れたんですよね。
 
 
ただ、地方映画館は今、壊滅的な状況にあります。下のグラフはシネコンとその他映画館(ここに地方映画館が含まれる)を棒グラフで示していますが、シネコンが2000年あたりから急増し、その他の小さな映画館が激減しています。
 
これが、地方映画館が凋落し、シネコンの独走となった「結果」のグラフとなります。
今回は、なぜこのような現象が起きてしまったのかを考察していきますす。

 

[グラフ1:映画館数とスクリーン数と興行収入の推移]

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https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2017/movie_dai1/sankou3.pdf

 

 

 

 
 

原因その① 映画人口の激減

  
都市計画的な議論に入る前に、まず前提としなければいけないことがあります。
それは、映画人口は昔と比べ激減していること
 
日本の映画全盛期は1950年代だというのは有名な話ですが、グラフ2がこの事実を如実に裏付けています。日本の歴代興行収入は「千と千尋の神隠し」「タイタニック」「アナ雪」「君の名は」とありますが、これは円と映画料金が高くなった後の話。実は、入場者数のランキングは1950年代60年代の映画がランキングしてきます。
 

[グラフ2:洋画邦画別の興行収入と入場者数と平均料金の推移]

f:id:Machinaka:20190826221729p:plain

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2017/movie_dai1/sankou3.pdf
 
ちなみに、1958年が日本の入場者数のピークとなり、約1億1000万人です。この時の日本の人口は9000万人なので、1人あたり1回以上は映画館で映画を見ている計算となります。
一方で現代(2010年以降)は2500万人を下回り、今の人口約1億2000万人で割ると、1人あたり0.2回。ピークの1958年と比べ、1/5以下になっているのです。
 

明らかに、映画人口の減少が映画館数の絶対数を減らしている原因となっているのです。


ちなみに、1958年には大映の「忠臣蔵」、東映の「忠臣蔵 櫻花の巻・菊花の巻」、「隠し砦の三悪人」「人間の条件」、「楢山節考」、洋画ではヒッチコックの「めまい」などが上映されています。

 

都市計画の話以前に、この現象を語らずして映画館の減少を語れません。

 

 

 

原因その② 映画館はクラブじゃない

 
はい、お待たせしました。都市計画の話です。
都市計画法の第8条に「地域地区」という土地の区分けがありまして、その中に「用途地域」という項目があるんですね。
 
用途地域とは、住宅系・商業系・工業系など、地域別に建築物の緩和・制限をするものとなっていて、都市計画用語では「ゾーニング」と呼ばれる手法です。
 
 
例えば、住宅街に風俗店やパチンコ店があったら騒音や治安の問題で困りますよね?
だから遊戯施設・風俗施設は最も厳しい立地制限を受けるわけです。
 
 
 
表1をご覧ください。遊戯施設・風俗施設が立地できるのは「商業地域」や「近隣商業地域」、あるいは「準工業地域」といった地域となります。もちろん、住宅系の地域には作れないわけです。
 
 
で、いざ本題。
この用途地域の中で「劇場・映画館」はどう区分けされるのかというと・・・
 
 
 

[表1:用途地域による建築物の制限(都市計画法第8条)]

 
 
拡大してみましょう。
 

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・・・
 
・・・
 
なに!? 
 
 
映画館はナイトクラブと同じ分類だって!? 
なんなら、キャバレーやパチンコ屋と同じだって?
 
・・・おかしくね?
 
 研究してる時はあまり注目してなかったのですが、映画館は最も立地規制の厳しい遊戯施設・風俗施設に分類されているんです。
 
映画館を立てるのは都市計画的には至難の技というか、かなり立地規制される建築物なんですよね。
ちなみに、この立地規制はシネコンも同様です。
 
つまり、映画館を作ろうとしても都市計画上の厳しい制限を受けてしまうのです。
 
例えば、川崎を代表する映画館であるチネチッタは「商業地域」内にあるため映画館が立地できているのです。
 
 
ちなみに、商業地域・近隣商業地域は基本的に駅前の繁華街やビジネス街にのみ分布していると考えてください。一方で、準工業地域というのは郊外にあるバイパス道路や国道のような場所に分布していると考えてください。
 
 まとめると、映画館は駅前にある商業系の地域か、郊外の準工業地域に立地できるってことなんです。
 
 
 
余談になりますが、梅田の映画館がクラブに変わってしまうニュースは、都市計画的には遊戯施設から遊戯施設に移行しただけで、何も変わらないんですよね。
 
 
 
 
 

原因その③ シネコンの受け皿となる大型店舗の郊外立地とその原因

 
映画館が都市計画上厳しい制限を受けているのは分かりました。
 
でも皆さん、何か忘れてませんか?
シネコンは年々増加傾向にあるんです。
 
こんなにも立地制限の厳しい映画館、の1ジャンルであるシネコンが、なぜここまで増加しているのか?
 
それは、タイトルにもある通り「都市計画的欠陥」があるのです。いわゆる「法の抜け道」ってやつです。
 
 
容易にイメージできると思いますが、シネコンは大きなショッピングセンターの中に立地していることが多いです。つまり、大きな商業施設の立地を見れば、シネコンがどこに立っているか分かる。
 
グラフ3は地方圏の大規模商業施設を用途地域別に表したものです。これを見ても分かる通り、商業地域に立地しているのは半数程度。それ以外は住居地域に商業施設が立地しているのです。
 
そして、何より目立つのは紫の準工業地域の立地です。
 

 

[グラフ3:2004年の地方圏における大規模商業施設の立地割合(用途地域別)]

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準工業地域は、駅前ではなく郊外など安い土地に分布する地域。商業地域のようにライバル店がなく、土地も空いている。
 
つまり、この準工業地域は大規模商業施設を立てるには最適な土地なのです。
まとめると、今回の本題であるシネコンは、この準工業地域に立地しているショッピングセンターの中に立地していると考えられます。
 
日本の映画人口が減少し映画館が減少している中、都市計画の立地制限が厳しい中で、シネコンは法の抜け道を使って増加していったのです。

 

 

 

余談ですが、大規模商業施設が立地するためには、都市計画以外にも法律があり、「大規模小売店舗法」という法律がありました。これで大規模商業施設が郊外に立地させないよう、規制していたんです。

しかし、この法律を撤廃させようと圧力を働きかけたのは、なんとアメリカです。しかも時代は1998年。

映画でいうと「バイス」の主人公であるバイス副大統領が現役バリバリの時期です。もしかしてアイツが、日本にシネコンとショッピングセンターを立てまくった張本人なのかもしれません。

 

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http://www.yendo.co.jp/story_02.html

 

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大規模小売店舗法が撤廃されたのは2000年です。もう一度言います。2000年です。

 

大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律(だいきぼこうりてんぽにおけるこうりぎょうのじぎょうかつどうのちょうせいにかんするほうりつ、昭和48年10月1日法律第109号)とは、大規模小売店舗の商業活動の調整を行なう仕組みを定めた日本法律である。略称大店法(だいてんほう)。2000年平成12年)6月1日廃止。 

http://ja.wikipedia.org/wiki/大規模小売店舗法

 

 

ここで最初にお見せした、グラフ1をもう一度掲載します。

シネコンは何年から激増しているでしょうか・・・?

 

[グラフ1:映画館数とスクリーン数と興行収入の推移]

f:id:Machinaka:20190826221832p:plain

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2017/movie_dai1/sankou3.pdf

 

 

 

 
 

原因その④ シネコンの立地は大店舗よりアウトローだった

 
 
商業施設が郊外の準工業地域に多く立地していることが分かりました。

 

・・・遠回りな説明で申し訳ないですが、実は劇場・映画館の立地割合も統計でありますw

 

これを見てみると・・・

 

 

[グラフ4:2004年の地方圏における劇場・映画館の立地割合(用途地域別)]

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準工業地域が少ないことが分かります。

ただ、よくみてください。なんか白と黒の地域に立地している割合が多いですよね。

なんだこれ?

 

白の地域は、「非線引き白地」、黒は「都市計画区域外」です。劇場・映画館に関しては、この二つに多く立地しているようです。

 

一つずつ説明しますね。

まずは「都市計画区域外」

そもそも用途地域って、「都市計画区域」という地域にしか作れないんですね。ちなみに都市計画区域に日本の人口のほとんどが住んでいます。

「都市計画区域外」は、農地と森林地域が大半だと思ってください。つまり人がまずいない場所です。シネコンは、そんな変な場所に立っているのです。

 

以上の文脈(と言うか法律)を踏まえると、もちろん「都市計画区域外」では「用途地域」による建築物の規制を受けません。つまり、シネコンは好きなだけ開発できてしまう(語弊がありますが、分かりやすさ重視でこうやって説明しておきますね)

 

一方の「非線引き白地」

 

用途地域を自治体が指定するとき、「線引き」か「非線引き」を選択することができるんです。「線引き」の場合、「市街化区域」と「市街化調整区域」に明確に区域を分けることができる。「用途地域」は「市街化区域」の中にしか作ることができず、「市街化調整区域」については、基本的に建築物の立地が規制されます。

 

一方の「非線引き」の場合は、「用途地域」と何も指定されない「白地」に分けることができるんですが、「白地」の場合はもちろん「用途地域」による立地規制を受けない。つまり、「非線引き白地」は「都市計画区域外」と同様に(厳密には違いますが)、シネコンが好きに立地できてしまうのです。

 

シネコンの立地は、大規模商業施設よりもアウトローかつグレーゾーンな立地なんですよ!

これを映画に例えると、まるで「デイアンドナイト」のような感じです。

 

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まとめ

 本記事のまとめです!
 
・そもそも前提条件として、映画人口の減少に伴い映画館数は減っている
 
・しかし、シネコンだけが増加している
 
・その原因として、本来であれば都市計画で厳しい立地を受けるべきシネコンが、郊外の準工業地域や非線引き白地、あるいは都市計画区域外という、法の抜け道的な場所で立地してしまっている
 
・これは現行の都市計画法に基づく考察であり、今もなお都市計画法は日本において有効である...

 

 

以上です!

 

なんか、日本おかしくね?

 

こんな適当な立地規制してるから、シネコンばかりが増えて地方の映画館がなくなるんだよね。。

 

 

より詳しく知りたい方のために

 

 大店舗について知りたい人はこちら!

全国大型小売店総覧 2020年版

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 映画館について知りたい方はこちら!

余暇・レジャー&観光総合統計 2020ー2021

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 都市計画について知りたい方はこちら!

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