- はじめに
- あらすじ
- 前々からなんとなくわかってた。
- 映画の感想
- 普通ならミニシアターにふさわしい内容だが
- デイアンドナイトの意味、風車の意味
- 強制的に勧善懲悪を区別しようとする現代に警笛を鳴らす作品。
- おまけ
- 2.6追記 ラストの明石の服装は、なぜ白でも黒でもなくグレーだったのか?
はじめに
今回公開する映画はこちら!
「デイアンドナイト」
それでは「デイアンドナイト」、感想・解説、ネタバレありでいってみよー!!!!
あらすじ
・俳優・山田孝之がプロデューサーに専念し、「善と悪はどこからやってくるのか」をテーマに描いたオリジナルドラマ。山田と同じ事務所に所属する俳優の阿部進之介が企画・原案から携わり、長編映画に初主演。山田は俳優として出演はせず、プロデューサーに専念したほか、脚本にも名を連ねている。明石幸次は父の自殺で実家へと戻ってきた。明石の父は大手企業の不正を内部告発したことから自殺にまで追いやられ、家族も崩壊寸前となっていた。そんな明石に手を差し伸べたのは北村という男だった。北村は児童養護施設のオーナーとして、父親同然に孤児たちを養いながら、「子どもたちを生かすためなら犯罪もいとわない」という清濁を共存させた道徳観を持っていた。児童養護施設で生活する少女・奈々は、北村に傾倒していく明石を案じていたが、復讐心が次第に増幅し、明石の中の善悪の境界線が瓦解していく。主人公・明石役を阿部、北村役を安藤政信、奈々役を清原果耶がそれぞれ演じる。監督は「青の帰り道」などを手がけた藤井道人。
前々からなんとなくわかってた。
山田孝之さんがプロデューサーとして活動してるのは、前々からわかってました。
だって、テレ東のフェイクドキュメンタリー、というかドラマで山田孝之さんはプロデューサーをやってたんですよ!!!!
もちろんフェイクですよ!?
でも、あまりに突拍子な設定に、「本当にプロデューサーしたいのかなぁ」って勘ぐってはいたんです。マジでやるとは思わなかったけど。
ドラマの感想もね、途中まで書いてたんですよ。
だって芦田愛菜ちゃんが殺人鬼を演じるとかって話だったので、注目するに決まってるじゃないですか。
まぁ、、、、、、
途中でつまんなくなって、感想書くのやめたんですけどねw
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ただ、このドラマ、今思えば映画を作ることがいかに大変なのか、今の邦画がどうやってできていくのか、企画を通す大変さがすごくわかるドラマとなっていて、すごく貴重な作品であったと思います。
また、芸能事務所に属しながらも事務所の意向を介さない孤高の俳優、山田孝之さん。
メジャーになりつつも、インディーズ系で映画を撮ることが好きな山下監督がタッグを組んでドラマを作っているので、日本映画に対する批判的な内容になったのは、自明のことかもしれません。
ただ、ラストは何度見ても好きになれないです(⌒-⌒; )
映画の感想
山田孝之さん、よくやってくれた!!
普通ならミニシアターにふさわしい内容だが
はい、山田孝之さんがプロデューサーということもあり、映画の内容的にはミニシアターなのですが、全国で60館もの公開があり、話題となり、ニュースにもなり、、
映画は俳優の人気で引っ張られてきましたが、今作によってプロデューサーが引っ張る時代になったのかもしれません。
山田さんは出演せずにプロデューサーとしての職務を全うしたことが、帰って正解だったと思います。
今作の主人公である阿部さんや明石モータースの面々は有名な人でなく、演技できる人を出演させた感じ。これ、山田さんが出ると全部持ってっちゃいそうな気がします。
物語はですね、突然自殺してしまった父親の顔を見るために、東京から帰ってきたフリーターの明石さんが主役。
明石さんの父親は正義感が強すぎるゆえ、地元の強力企業に喧嘩を売ってしまう(法律違反ではないが、強度不足の部品を使用していたことを非難し、訴訟を起こしてしまう)。
強力企業は街にとっては重要な存在。明石父が訴訟を起こしたせいで地元企業の仕事がこなくなり、街全体が不景気に。
街全体から恨まれ疎まれてしまった明石家族は完全に崩壊。そして、明石の父は訴訟を起こしてしまった責任から、自殺を選択してしまう。
父の訃報を受けて、東京でブラブラしていた明石が地元に帰ってくるところから物語は始まる。
父のことが嫌いだった明石だったが、父の仲間と称する北村と出会い、父の知られざる顔を知る。
父は昼間は自動車の解体工場で真面目に働いてたが、夜は盗難車の解体を請け負うアウトロー集団のサポートを買って出ていたのだ。しかし、それも児童養護施設の運営費であったり、外国人の雇用創出のためであったり、善と悪の区別が非常に難しい慈善事業でもあった。
複雑な感情を抱えながらも、父親=正義だと信じ強力企業の陰謀を暴こうと奔走する明石。
しかし、最後には思わぬ結末が待っていたのだった。。。
という流れです。
旬の清原果耶さん以外は、主演の阿部さん:インディーズ系、室井滋、小西真奈美:久々に見たw 田中哲司さんなど、正直主役とは言いがたい人たちがメインキャストになっており、派手な作品ではございません。
ミニシアターで公開されるような作品であるのに、ここまで規模を拡大して公開されたことが本当に嬉しいです。映画も面白かった。
デイアンドナイトの意味、風車の意味
東京でブラブラしていた30代が田舎に帰っていて大切な何かに気づく。こんなプロットの映画、もうどれだけ何回も作られてきたんだろう。。笑
しかし、今回はありきたりな地方映画ではなく、「正義と悪の境目」「家族を結びつけているものは何か」という是枝裕和さんが得意とするようなテーマ性の作品だったんですよね。
タイトルの「デイアンドナイト」=「昼と夜」は、正と悪、人間の二面性、物事の裏と表。などいろんなメタファーが込められてると思われます。
そして度々挿入される風車は、主人公の明石をはじめとした人間の活動自体を表していると思いました。昼も夜も動き続ける風車は、主人公の明石が昼間に養護施設で働き、夜はアウトローで働く明石を象徴していると思いました。
明石がもがけばもがくほど、波風が立っていく街。しかし、風に比例して風車はより激しく動きを強めていくのです。
強制的に勧善懲悪を区別しようとする現代に警笛を鳴らす作品。
TwitterなどSNSに端を発する発言が、社会問題になることが増えてきました。
私もTwitterを見てるので炎上してるアカウントやニュースをよく見ることがあるのですが、いつも気になるのは「正義と悪を二極化して考えすぎている」人が多すぎる、ということ。
最近だとNGTの山口真帆さんの暴行事件が大変話題になってますけども、山口さん=正義、Z会=悪とみなす人が多い。Z会を散々叩き、加害者を徹底的に糾弾するようなツイートをよく見かけます。
ただ、果たして単に正義と悪に分けて考えていいのでしょうか? 物事には何事も二面性があり、正義か悪かで人を分けることなど意味のないことなのです。
「そっちの方がわかりやすいから」
「正しいことしてるのに、何が悪いんだよ!」
って言われそうですが、そもそも山口さんの言っていることが全て正しくて、Z会が全て悪いのか、という疑問を抱いて欲しいです。本人から直接話を聞いていない以上、無理に結論をつけるのはいけないことです。
ちなみに、とある人から聞いた話ですが、今回の事案にZ会は介入してないとか、別の団体が関わっているかとか、という話もあります。
人を正か悪かで決めつけることが、いかに愚かなのかをこの映画では痛いほど知ることができます。
正か悪かというのは、客観的ではないのです。主観的なのです。
今作では明石なりの正義、北村なりの正義、強力企業側の三宅なりの正義がぶつかり、正義のマウント合戦が行われるのです。
お互いを出し抜くために悪に手を染め、正義の行動だったはずが次第に悪に染まっていく。
正義の暴走が行く末が今作の結末であり、現代社会に生きる皆様に、この映画の結末を見届けてほしいと思いました。
大作映画では絶対にできないような内容を、山田さんがプロデューサーとなり営業をしたことでここまで公開規模が大きくなり、一般の方にもミニシアター系の作品が観れるインフラを整えてくれたことに非常に感謝しています。
皆さんもこれを機会に、ミニシアター系の作品にはまってみてはいかがでしょうか?
おまけ
どうでもいい内容ですが、主演の阿部さんがTOKIOの長瀬くんに顔も声もそっくりで、ずっと長瀬くんをイメージしてみてしまいました笑
あと、明石の同僚の金髪くんが綾野剛さんにそっくりで、それも少しノイズになってしまいましたw 気にしなきゃいいんですけどねぇ、、
2.6追記 ラストの明石の服装は、なぜ白でも黒でもなくグレーだったのか?
映画ブロガー界の冴羽リョウこと、狙ったアニメは逃さないアニメ映画ハンターの「物語るカメ」さんのブログを読んで、服の色について興味が湧きました。
おっしゃる通り、この映画のキャラクター、やたら白と黒の服を来てることが多いんですよ。
確かに、北村は白いシャツと黒いジャケットのような組み合わせの服が非常に多かった。その服の色の組み合わせが、そのまま「デイアンドナイト」=「日中と夜」=「白と黒」=「善と悪」に結びついてると思うんですけども。
つまり、北村は日中はNPO法人で家なき子のために慈善活動をしてるわけだけど(白の部分)、夜はアウトローの世界に君臨する(黒の部分)。
そして、自動車部品の欠陥を指摘し、「白黒はっきり」つけようとした明石父を尊敬していた。白は白。黒は黒。昼の仕事に夜の仕事を混ぜない。その逆もまたしかり。彼は白黒はっきりさせたかったキャラクターだ。白
北村に白と黒の服を着せることで、キャラクターの説明をしてるとも言える。
明石も北村と同じ生活を送っていたため、昼間は白の服、夜は黒の服をよく来ていた。しかし、後半には黒の服ばかりになってします。
北村が死んでしまったあと、彼に残されたものは三宅への復讐のみ。もうどす黒いものしか残ってない。
下の画像をみればわかるように、服は真っ黒で、白い吐息を吐き出している。これは自分の中から白=善を吐き出しているのではないだろうか?
このように、デイアンドナイトは白と黒の対比が印象的に使われている。
しかし、今作「デイアンドナイト」にはもう一つ印象的な色がある。
それは「グレー」
度々回想で出てきた明石の父は、髪はグレーっぽい白髪頭で、作業着はグレー、ジャンパーもグレーの比率が高い。
ここに何か意味があるのではないかと考えた。
グレーは、白とも黒とも言えない、白か黒かどちらにも転べそうな、曖昧な色。
グレーは日中であれば、太陽の光で「白」にもなる。しかし、夜は暗闇の影響で「黒」にも見える色だ。
今作の「白:黒=善:悪」という図式を引用すれば、グレーの色は善にも悪にもなるが、善とも悪とも言えない色、と位置付けることができるだろう。
すなわち、グレーとは今作のテーマである「善とは何か?悪とは何か?」を象徴する色にもなり得るのだ。
今作を象徴するのは北村でも明石でもなく、明石の父であると思う。
そして明石は、父の無念を晴らすべく奔走しながらも、常に父の影を追いかけていた。父を尊敬していたのかもしれない。間違いなく、北村は父を尊敬していた。
父が途中で訴訟を断念した一方、明石は白黒はっきりつけようとしすぎた結果、三宅を暴行し、車上荒らしを加熱させ、超えてはいけない線を超えすぎた。
その結果ツケが周り、服役した。
父親=グレー、ではなく、黒を選んだ明石。当然の結果と言えなくもない。
しかし、清原果耶と面会した時、明石が着ていた服はなんだっただろうか?
それは、グレーのスウェット。
今作の終わり方に疑問を抱いた方も多いかもしれないが、ちゃんと答えが用意されていた。
明石が目指していた父親に、近づいたのである。
彼の人生、これからどうなるか分からない。清原さんとどうなるかも、分からない。
ただ、一連の事件をきっかけに、彼の人生観は間違いなく変わったのである。
これまで白黒はっきりつけようと躍起になり、「自分の行っていることは善だ」と思っていた明石だったが、グレーの服を着ることで、「善と悪は人によって違う。どこにスポットライトを当てるかどうかで、白にも黒にもなる」と、身をもって体感してるんだと思う。
以上、グレーの色の考察でしたー。
映画におけるグレーの色と言えば、「ララランド」のそうだった。
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あと、「ピンクとグレー」という映画も、あったような、なかったような。。。
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