- まえがき
- あらすじ
- 「映画ドラえもん のび太の新恐竜」のネタバレありの感想と解説(短評)
- 夏休みにピッタリな王道アニメ
- ベタにはベタを超える瞬間(とき)がある
- 飽きさせないダイナミックなカメラワークと編集
- 少し違和感がある恐竜CG
- 「君の名は」との共通点も
- なぜ「新」恐竜なのか?
- 8/8追記 色めがね映画評論「キューとミューはのび太としずかちゃんのメタファー?」
- まとめ
まえがき
今回批評する映画はこちら
「映画ドラえもん のび太の新恐竜」
というわけで、ミスチル目的での鑑賞でございますーー。
あ、あと強いてゆうなら「君の名は」で非常に印象的だった隕石が星を舞う美術背景が予告編で多用されていて、個人的に好みというのもあります。
はい、それでは「映画ドラえもん のび太の新恐竜」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。
あらすじ
・国民的アニメ「ドラえもん」の長編映画40作目。シリーズ最高の興行収入53.7億円を打ち立てた「映画ドラえもん のび太の宝島」(2018)の監督・今井一暁×脚本・川村元気が再びタッグを組み、のび太と双子の恐竜の出会いから始まる物語を、長編映画シリーズ第1作「映画ドラえもん のび太の恐竜」(1980)とは異なるオリジナルストーリーで描く。ある時、恐竜博の化石発掘体験で化石を見つけたのび太は、それを恐竜のたまごだと信じ、ドラえもんのひみつ道具「タイムふろしき」で化石を元の状態に戻す。するとそこから、新種の双子の恐竜が生まれる。2匹をキューとミューと名づけて育てるのび太だったが、やがて限界がきてしまい、2匹を元の時代に返すことに。ドラえもんや仲間たちとともに6600万年前の世界へと旅立ったのび太は、キューとミューの仲間を探す中で謎の島にたどり着き……。
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「映画ドラえもん のび太の新恐竜」のネタバレありの感想と解説(短評)
#ドラえもんのび太の新恐竜 鑑賞。
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2020年8月7日
「ゴジラ」→「シンゴジラ」に続く、東宝リメイクの「新」たな傑作の誕生!
・ミスチルによるMV的な演出
・隕石衝突から多くの命を救う場面
など、「君の名は」で培った川村元気の盤石演出が光る。
ドラえもん50周年で絶対に失敗出来ない中で、よくやった!! pic.twitter.com/QMOaVUyc22
夏休みにピッタリな王道アニメ
ベタにはベタを超える瞬間(とき)がある
1作目の「のび太と恐竜」の三度目のリメイクとなった今作ですが、ドラえもん50周年の記念映画ということもあって、非常に手堅いところで攻めてきたなぁというのが正直な感想です。
普通なら王道過ぎてつまらんなぁと思っちゃうんですけど、
・テンポよく進行してくれる物語と編集
・可愛すぎるキューとミューのキャラ造形
・美しい背景美術
・ダイナミックなカメラワーク
など、映画的に魅力のある要素が必要十分以上に詰め込まれており、本当に満足できた作品となりました!!!!
もうね、ラストから語っちゃいます。
最後のシーンはベタですけども、もう泣けて仕方がありませんでした。。
羽ばたけない恐竜キューと、逆上がりが出来ないのび太という構図を強調して、「上手く飛べない」という共通課題を浮かび上がらせる。
二人とも飛ぶために一生懸命訓練し、最後はキューが飛んでのび太を助ける。
そして、ついにのび太も逆上がりに成功し、見上げた空には二人の鳥が飛んでいる・・・
か ら の ミスチルの「Birthday」ですよフォおおおおおおおおお!!!!
飛べないキューがここぞと言う時に勇気を振り絞り、飛び立つ・・・いわゆる「クララが立った」的なラストですよね。
言わせてください、「ベタですね」、と。ふふふ・・・。
でもね、でもね、そのベタさが今作では非常に良い方向に働いているんですよ!
おじさん、ベタが大好きです!!
あそこまで強調した「飛べない二人」という構図は子供にも分かりやすく、そしておじさんの私も感動してしまいました。
話は見えてるんですけど、それを抜群の画と音楽で磨き上げてくるんですよ・・。
「ベタにはベタを超えてくる瞬間がある」と私は思っているのですが、今作はまさにベタを超えたベタな作品で・・・
もう、今思い出しても泣いちゃうわぁぁぁぁ!!!!
インド映画だと「バジュランギおじさんと、小さな迷子」を思い出しました。
今作の脚本を務めた川村元気さんは小説家やプロデューサーというクリエイター的な一面が目立ちますが、大前提として「会社員」なんですよね。
ドラえもん50周年という、東宝にとってもテレ朝にとってもシンエイ動画にとっても非常に重大な場面で、絶対に失敗できない作品であることは皆が承知のはずです。
そんな中で、話はベタだけど(何度もすいません)、映像・楽曲を担当するスタッフの力を信じて、脚本で妙な路線に曲がらずに、王道で突っ走ってくれた事が素晴らしいです!!
脚本で個性を出すことよりも、全体の利益、会社の利益を考えて作っていたような気がしております。
こういう作り方は、時に「商業映画」として侮蔑されることも多いんですけど、まぁいいじゃないですか! ドラえもん50周年だもん!裏切れないもん!
小説家というよりは、「職人作家」として失敗しない映画作りをやってくれたのが非常にグッドなポイントでした。
川村元気さんといえば、昔、こういう記事も書いてしまいましたが・・
水に流します!!!
www.machinaka-movie-review.com
飽きさせないダイナミックなカメラワークと編集
少し違和感がある恐竜CG
恐竜の3DCGは非常に独特で、手書きの部分と比べて非常に違和感があるように見えますよね。
恐竜のCGが手書きのパート(キャラ+背景美術)とライティングが合ってないんですよね。。
また、奇妙だと思ったのはCGのテクスチャ部分。
普通CGはですね、骨格(ポリゴンを作る)とテクスチャ(ポリゴンの上に貼る画像)によって作られているんですけど、テクスチャの作りが普段のCGらしくないんですよね。
テクスチャをより現実世界に近づけるためには、マテリアル設定(材質設定)とPBR(物理ベースレンダリング)が必要なんですけども、この2つの設定が・・限りなくないんですよ!!!!
だから、妙にのぺぇ〜とした異物感のある恐竜が出来上がるのです。
これはどういう演出なんですかね、同じ恐竜でもキューやミュー、敵役のプテラノドン?は手書きでやっているので。。
CGと手書きでスタッフが違うのはもちろん承知ですが、なぜ異物のようにCG恐竜が出来てしまったのかなぁと、少し首を傾げてしまう自分がいました。
現代のアニメはCGと手書きの境界を出来るだけなくし、シームレスに映像を作るのが主流となっております。例えば「名探偵コナン」の劇場版なんかはCGと手書きの協調性が非常に高く、一つの画としてまとまりがあるんですよね。
www.machinaka-movie-review.com
これ、おそらくですけど、手書きのパートの上に3DCGで作った恐竜を重ねているんじゃないでしょうか?
喜怒哀楽をハッキリさせるのも、子供にとっても非常に分かりやすいと思いました。
飛べないキューに侮蔑を捧げる恐竜の憎たらしい顔・・からの、のび太に一太刀を浴びせて、ちゃんと血を見せるのが良かったですよ。子供向けアニメだと血を見せないこともあるんですけども、逃げなかったですねぇ今作は。
「君の名は」との共通点も
なぜ「新」恐竜なのか?
「#のび太の新恐竜 」のタイトルになぜ「新」が付いたのか?
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2020年8月7日
脚本の川村元気は東宝社員として成功した後、STORYという新会社の取締役になり東宝から出向した。
自身の出来事と、東宝から独立した社員たちによって作られた「新東宝」の「新」を重ねているのだとしたら、川村元気、アンタはすげぇよ。 pic.twitter.com/D2KfIftnRl
ちなみに、川村元気さんのタイトルセンスは「君の名は」から光っていて。
1953年、松竹の「君の名は」という映画がありまして。アニメの「君の名は」はこのタイトルが元ネタという説があるんですよね。で、このタイトルを付けたのは川村元気その人である、と。
ちなみに松竹の「君の名は」も、運命のめぐり合わせによって出会えない男女の物語なんですよね。。単に60年以上まえの作品からタイトルを拝借するだけでなく、ちゃんとストーリーに沿ったタイトルになっているのが本当に素晴らしいです!!
「君の名は」の前例もあるように、川村元気のタイトルセンスは抜群で、秀逸なんですよね。
もしかしたら今回も、何か特別なタイトルネーミングをしたようにしか、思えないのです。。
あくまで私の考察です!
そして、川村元気さん、ちょいちょい呼び捨てにしてすみませんでした!!!
8/8追記 色めがね映画評論「キューとミューはのび太としずかちゃんのメタファー?」
スカーフの配色について、少し気になった点を挙げたいと思います。
このスカーフの色、基本的にはパーソナルカラー(その人を表す色)になっていて、
ジャイアンだと普段着のオレンジ服を表すためにオレンジ色のスカーフを着ているんですよ。
のび太は黄色の服、しずかちゃんはピンクの服を模したように。
ドラえもんが真っ赤なのは、主人公=戦隊モノのレッド?だからかな。
スネ夫の色考察については、紙面の都合上、割愛します。
この配色で気になったことがあったんです。
ほとんどの人が気づいたと思うんですけど、キューとのび太、ミューとしずかちゃんで、スカーフの色が全く同じなんですよね。
物語上でも、キューとのび太にはイコールの関係が完全に結ばれていて、ポスターにもキミはのび太と明言しているんです。
一方、しずかちゃんについては直接的な関係性は示されなかったものの、白亜紀の世界に行って以降は、しずかちゃんとミューが常に横にいたような、、そんな気がしてならないのです。なんか、妙なシンパシーを感じるんですよ・・・
あと、決定的だと思ったのは「髪型」ですね。恐竜に髪型なんてあるのか、と思うんですけども、そこはどうかご容赦ください笑
Twitterに画像を貼ったので、ご覧ください。
キューとのび太は芽のような二本の毛が、ミューとしずかちゃんは3本の毛が立っているのが分かると思います。これは、偶然じゃないと思うんですよ・・。明らかに意図したキャラクターデザインだと思うんですよね。
キューとのび太、ミューとしずかちゃん、髪型的に同一人物説。#ドラえもんのび太の新恐竜 pic.twitter.com/dNm7YdXeDz
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2020年8月8日
ちなみに、公式サイトは非常に奇妙な作り方をしていて・・・
ゴル=ジャイアン、トップ=スネ夫とあからさまに誘導するような画像が掲載されていてるんですけど、キューとミュー、のび太としずかちゃんの関係については何も書いてないんですよね。
これ、、画像の掲載順的にも、キュー=のび太、ミュー=しずかちゃん、っていう関係を表してるんじゃないの?
なんか、この4枚の画像に統一感がないわけですよ。キューとのび太、ミューとしずかちゃんの関係を隠したいような気がしてならないのです。。
あくまで個人の考察ですが、配色的にも髪型的にも、キューはのび太、ミューはしずかちゃんなんだと思っております。
そして、この関係が正しいのであれば、もう一つ考察できることがあって。
今作のラストでキューとミューは結ばれ、二人で仲睦まじく生きていくようなシーンが映りますよね(二羽の鳥が羽ばたいていく)。
また、キューとミューを元の場所に帰らせるために、のび太たちは「過去」に向かうわけです。
過去に生きていた2匹の恐竜(キューとミュー、すなわちのび太としずかちゃん)が出会い結ばれていくシーンを見て、思うところがあったんです。
この映画で、「未来」はどこに描かれてたんだろう?
ミスチルの「Birthday」の歌詞には、「君にだって2つのちっちゃい牙があって、1つは過去1つは未来に噛みつきゃいい」とあるんですよね。
過去は分かりますよ、過去は。でも未来ってなんなんだろう、、と少し気になる所がありまして。
もしかしたらですけど、今作が「過去」を表す物語だとしたら、同じくドラえもん50周年記念作品として作られる「STAND BY ME ドラえもん2」は「未来」にあたる作品になっているのではないか、と思ったんです。
今作の鑑賞前に、「STAND BY ME ドラえもん2」の予告編が流れていたことからも、制作側としては、今作の新恐竜と併せて見てほしい作品なんだと感じたんです。
ちなみに、「STAND BY ME ドラえもん2」の話は「未来」の、のび太としずかちゃんの結婚について描かれており、未来というテーマと符号するんですよね。
まとめますと、今作では白亜紀というはるか遠くの「過去」を舞台に、キューとミュー(のび太としずかちゃん)が出会い、結ばれていく話。
そして今後公開される「STAND BY ME ドラえもん2」にて、「未来」の、のび太としずかちゃんを描く。
この二作で「過去と未来」をつなぐ、という壮大な物語を描こうとしているのではないでしょうか?
先程の川村元気考察と同じく、こちらも完全に私の独断と偏見による考察でございます。
本当かどうかは分かりませんが、ここまで考察をさせてくれる話というのは、間違いなく名作です。
ここまで書いたら、「STAND BY ME ドラえもん2」も見なきゃいけなくなってしまいますよね。。。
うん、決めた!
未来のMachinakaに対して、宣言しますよ!
俺は「STAND BY ME ドラえもん2」を観るよ!!
まとめ
はい、まさかこんなに大興奮するとは思ってもみませんでした。
正直、ドラえもんで10,000文字以上書いてしまうとは、、。
ドラえもん50周年で、絶対に失敗できない環境で見事な王道を行ってくれたと思っています。
脚本の川村元気さん、物語はベタな気もしましたが、個人的にはタイトルで自分を出してきたのではないか、と個人的には思っております。何度も言いますけど、あくまで私の考察です笑
子供も大人も、映画にうるさい私でも十分以上に楽しめる作品でざいました!!
お見事!!!
90点 / 100点